DOWNLOAD

資料ダウンロード

コラム

2025/12/17

NEW 企業が「繊維リサイクル」に取り組むべき理由。環境配慮対応がもたらすブランド価値の考え方

世界的な潮流として「サステナビリティ(持続可能性)」が企業経営の必須要件となる中、各企業は大きな転換点を迎えています。かつての大量生産・大量消費・大量廃棄を前提としたビジネスモデルは限界を迎え、環境負荷の低減を求める声は日々高まっています。

「繊維リサイクル」と聞くと、アパレル業界などが抱える課題と思われがちですが、繊維廃棄物一般衣料品だけではありません。販売店のスタッフの制服やユニフォーム、製造の現場で着用している作業服やエプロン、さらには販促品として使われているのぼり旗など、あらゆる企業にとって無関係とはいえない課題なのです。これらの処理方法を考えることは、単なる廃棄物処理の問題にとどまらず、企業のブランド価値、投資家からの評価、そして将来的な存続を左右する重要な経営課題となっています。

しかし、多くの企業担当者様からは「コストがかかるだけでメリットが見えにくい」「何から始めれば良いかわからない」という声を耳にします。

本記事では、なぜ今、企業が繊維リサイクルに本腰を入れるべきなのか、その背景にある社会的責任と、具体的な5つのビジネスメリットについて解説します。株式会社GREEN FLAGが考える、無理なく確実に成果を出すためのアプローチも併せてご紹介します。


目次(読みたいブロックにジャンプします)
●各企業に求められる「製造責任」とSDGs

環境配慮型素材(サステナブル素材)への転換圧力

消費者・投資家が注目する企業の環境活動評価

●廃棄繊維を「資源」として活用するビジネスメリット5選

1.廃棄コストの削減とリスクマネジメント

2.消費者・投資家が注目する企業の環境活動評価

3.環境配慮製品の販売による新規顧客層の開拓の可能性

4.リクルートへのプラス影響

5.対外的な企業価値が高まる

●GREEN FLAGが提案する、廃棄物ゼロへのアプローチ

「論より証拠」ミニマムでスピード感のある取り組みが重要

社内施策から段階的に事業化へ






各企業に求められる「製造責任」とSDGs




これまでの経済活動において、製品を作り販売した後の「廃棄」については、自治体や消費者の責任とされることが一般的でした。しかし、SDGs(持続可能な開発目標)の浸透や、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行に伴い、製造者自身が製品のライフサイクル全体に責任を持つ「拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)」の考え方が急速に広がっています。


環境配慮型素材(サステナブル素材)への転換圧力

繊維業界は、石油産業に次いで環境負荷が高い産業であると国際的に指摘されています。環境省の資料によると、服一着を作るために排出されるCO2は約25.5kg、水消費量は約2,300リットルに及ぶと試算されています。これに加え、化学繊維(ポリエステル等)によるマイクロプラスチック問題も深刻です。

こうした背景から、欧州(EU)を中心に環境規制が強化されています。例えば、EUでは売れ残り衣類の廃棄禁止や、製品の耐久性・リサイクル可能性を求める「エコデザイン規則案」などが審議されており、この流れは日本を含むグローバル市場に波及しています。 日本国内でも、経済産業省や環境省が主導して「繊維製品の資源循環」に関する検討会が重ねられており、将来的には法規制やガイドラインによる縛りが強まることが予測されます。



消費者・投資家が注目する企業の環境活動評価

「ものづくり」の責任を問う目は、規制当局だけでなく、消費者や投資家からも厳しく向けられています。


1. エシカル消費の台頭

特にZ世代やミレニアル世代を中心とした若年層は、製品の価格や機能だけでなく、「その企業が社会的責任を果たしているか」「環境に配慮しているか」を購入基準にする傾向が顕著です。「グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)」に対する批判も鋭くなっており、企業は実態を伴ったリサイクル活動とその透明性のある情報開示が求められています。

2.ESG投資の拡大

投資家や金融機関は、財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を重視する「ESG投資」を加速させています。繊維リサイクルへの積極的な投資や廃棄物削減の成果は、長期的な企業価値を判断する重要な指標となります。逆に、環境リスクへの対応が遅れている企業は、資金調達コストの上昇や株価低迷のリスク(ダイベストメント)を招く可能性があります。




廃棄繊維を「資源」として活用するビジネスメリット5選




「環境対応はコストがかかる」──そう考える経営者の方は少なくありません。確かに、新たなリサイクルスキームの構築には初期投資が必要です。しかし、視点を変えれば、廃棄繊維を「資源」として捉え直すことで、従来のビジネスモデルでは得られなかった多角的なメリットを享受できます。ここでは主な5つのメリットを挙げます。



1. 廃棄コストの削減とリスクマネジメント

最も直接的なメリットは、廃棄物処理費用の適正化です。産業廃棄物の処理委託費は年々上昇傾向にあり、埋め立て地の逼迫に伴い今後も高騰が予想されます。

繊維くずを単に焼却・埋め立て処分するのではなく、リサイクルルートに乗せ、さらには将来的に循環資源として活用する方法まで模索することで、長期的には全体コストを抑制できる可能性があります。また、将来的に導入が検討されている炭素税や廃棄物税といった規制リスクに対する事前の防衛策(リスクマネジメント)としても機能します。


2. 成長性のアピールと投資家からの資金調達

前述の通り、サステナビリティへの取り組みは投資家への強力なアピール材料です。 例えば、「自社の廃材を100%リサイクル製品化する」といった野心的な目標を掲げ、それを着実に実行することで、ESG評価機関からのスコアが向上します。これにより、グリーンボンド(環境債)の発行による有利な資金調達や、機関投資家からの長期的な資金流入が期待できます。リサイクル事業そのものを新たな収益の柱として成長性を描ける可能性も出ます。


3. 環境配慮製品の販売による新規顧客層の開拓の可能性

回収した繊維をアップサイクルして生まれた製品(バッグ、雑貨、建材など)は、既存製品とは異なるストーリー性を持ちます。 「廃棄されるはずだったものが、新しい価値を付加され美しい製品に生まれ変わる」という物語は、消費者の共感を呼びやすく、これまで接点のなかった環境意識の高い層や、感度の高い層を新規顧客として取り込むきっかけになります。他社との差別化が難しい成熟市場において、リサイクルという付加価値は強力な武器となります。


4. リクルートへのプラス影響

意外に見落とされがちなのが、採用活動(リクルート)への効果です。就職活動を行う学生や転職希望者は、企業の将来性や社会貢献度を非常にシビアに見ています。 「環境問題に真剣に取り組んでいる企業」というブランドイメージは、優秀な人材を引きつける大きな要因です。また、既存社員にとっても、自社の活動が社会の役に立っているという実感は、エンゲージメント(帰属意識)の向上や離職率の低下につながります。社員が誇りを持って働ける環境を作ることは、人的資本経営の観点からも重要です。


5. 対外的な企業価値が高まる

リサイクル活動は、広報・PRの観点からも非常に有効なコンテンツです。 具体的なリサイクル事例や、他業種と連携したサーキュラーエコノミーの実証実験などは、メディアに取り上げられやすく、広告費をかけずに企業の知名度と好感度を上げるチャンスとなります。地域社会と連携した回収イベントなどは、地域貢献としての評価も高めます。



GREEN FLAGが提案する、廃棄物ゼロへのアプローチ



メリットは理解できても、「大規模な投資は難しい」「何から手をつければいいかわからない」という企業様も多いでしょう。 株式会社GREEN FLAGでは、最初から100点を目指すのではなく、実現可能な範囲から着実に進めるアプローチを推奨しています。


「論より証拠」ミニマムでスピード感のある取り組みが重要


リサイクル事業の立ち上げにおいて最も重要なのは、「計画に時間をかけすぎないこと」です。完璧な循環システムを机上で数年かけて議論している間に、市場のトレンドや技術は変わってしまいます。

まずは、以下のような「小さくても目に見える形」でのスタートをおすすめしています。

制服・ユニフォームのリサイクル

社内でモデルチェンジにより不要になった制服を回収してRebornfiberボードを制作、ボードを加工して社内で使用する備品を制作してみる。

ノベルティの製作

自社の残反(生地の切れ端)を収集して原料化し、コースターやトートバッグを作り、展示会や会社説明会で配布する。

オフィス家具への導入

自社の廃棄繊維を圧縮成形したRebornfiber®ボードの吸音性を活かして、社内の会議室のテーブルや吸音パネルとして採用する。


これらは比較的短期間で実施でき、かつ「論より証拠」として社内外に成果を示しやすい取り組みです。小さな成功体験を作ることで、社内の理解を得やすくなり、次のステップへの推進力が生まれます。



社内施策から段階的に事業化へ

GREEN FLAGが支援する典型的な成功パターンは、社内施策(インナーブランディング)から始まり、徐々に事業化(アウターブランディング)へと展開していく流れです。


フェーズ1:現状把握と社内利用

自社から出る繊維廃棄物の量と種類を把握し、それらを備品や什器に変え、自社オフィスや店舗で実際に使用します。社員自身がリサイクル製品の品質やデザイン性を体感することがスタートです。

フェーズ2:ストーリーの発信

「私たちのオフィスの壁は、かつての制服からできています」というストーリーをWebサイトやCSRレポートで発信します。見学者や取引先への強力なプレゼンテーション素材となります。

フェーズ3:製品化・外販

社内での運用実績をベースに、リサイクル素材を用いた製品を一般消費者向けに開発・販売したり、同様の課題を持つ他社へソリューションとして提供したりします。ここまで来れば、リサイクルは「コスト」ではなく「収益を生む事業」へと進化します。



株式会社GREEN FLAGは、企業の廃棄繊維を原料にしたオリジナル素材の製造から、アップサイクル製品の企画・開発、そしてその先の循環の仕組み化まで企業・団体様に並走するかたちでサポートいたします。

「捨てる」を「使う」へ。そして「価値あるもの」へ。貴社のブランド価値を高め、未来への責任を果たすパートナーとして、ぜひ私たちにご相談ください。




当社ではお客様からお預かりした廃棄繊維をボード化・シート化して、企業活動のお役に立つ新しい材料としてお戻しするサービスを行っています。古着、繊維くず、ユニフォーム、リネンなど、作業着やユニフォームに限らず繊維であれば何でもご相談可能です。詳しい事業内容をご覧になりたい方はGREEN FLAG事業紹介ページをご覧ください。




執筆者



Noriko Yokokura

廃棄繊維を資源化し、サーキュラーエコノミーを実現したい企業の事業支援を行う素材のメーカー、株式会社GREEN FLAGにて営業企画を担当。廃棄繊維ゼロを目指す様々な事業のサポートを通じて学んだ知識を活かし、環境問題や社会課題についてみなさんにわかりやすいカタチで発信します。




株式会社GREEN FLAG トップページ