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コラム

2025/12/16

回収された不用な衣類はどう生まれ変わる?繊維リサイクル製品の具体的な用途と活用事例

サステナビリティ(持続可能性)が企業経営の根幹に関わる重要課題となって久しい現在、アパレル産業や繊維製品を扱う多くの企業にとって「廃棄繊維の行方」は無視できないテーマとなっています。 環境省「産業廃棄物の排出・処理状況等について」のデータによると、日本国内の事業活動に伴って排出される「繊維くず(産業廃棄物)」の排出量は、年間約80万トン前後で推移しています。(※これにはアパレル在庫の廃棄だけでなく、建設現場や工場から出る繊維ごみも含まれます)

これまで長らく「事業ごみ」として扱われてきた古着や繊維廃棄物ですが、ここ数年で、単なるゴミではなく、新たな付加価値を持った製品へと生まれ変わらせる技術革新が進んでいます。本記事では、廃棄繊維を主原料にしたサステナブルな新素材Rebornfiber®の展開でサーキュラーエコノミーの実現を目指すGREEN FLAGが、回収された繊維ゴミが具体的にどのような製品へ生まれ変わっているのか、その最新の用途と活用事例を解説します。リサイクル製品の導入をご検討中の企業様にとって、新たなビジネスのヒントとなれば幸いです。


目次(読みたいブロックにジャンプします)




繊維リサイクルによって生まれる「再生製品」の種類




繊維リサイクルと一口に言っても、その手法や最終製品は多岐にわたります。一般的に繊維のリサイクル手法は、素材としての性質を変えずに利用する「マテリアルリサイクル」、化学的に分解して原料に戻す「ケミカルリサイクル」、熱エネルギーとして回収する「サーマルリサイクル(エネルギー回収)」の3つに大別されます。

これらの中でも、CO2排出量の削減効果が高く、資源の有効活用として現在最も注目されているのが、モノからモノへと生まれ変わる「マテリアルリサイクル」および「ケミカルリサイクル」による再製品化です。ここでは、従来の代表的な再生製品の種類について詳しく見ていきます。


【マテリアルリサイクル】工業用ウエス・自動車内装材への加工

古着リサイクルの中で、古くから確立されているルートの一つが産業用資材への転用です。これらは華やかなファッション製品として店頭に並ぶことは少ないですが、産業界を支える重要なインフラの一部となっています。


1.工業用ウエス(拭き取り布)

回収された古着の中で、綿含有率が高く吸水性に優れたTシャツやトレーナーなどは、一定のサイズに裁断され「工業用ウエス」として再生されます。これらは自動車整備工場や印刷工場、建設現場などで、機械の油汚れや塗料を拭き取るために使用されます。一度使えば汚れて廃棄される消耗品ではありますが、新品の生地を生産して使い捨てるよりも環境負荷が低く、古着の吸水性をそのまま活かせる合理的なリサイクル手法です。

2.自動車内装材への加工

ウエスに適さない素材や、ボタンやジッパーを取り除いた残りの繊維は、専用の機械で綿(わた)状にほぐす「反毛(はんもう)」という工程を経ます。こうして得られた再生繊維(フェルト)は、自動車のフロアマット、トランクの内張り、天井材、ドアトリムの吸音材など、見えない部分に大量に使用されています。自動車メーカー各社は環境対応の一環としてリサイクル材の比率目標を掲げており、需要は安定しています。


これらの用途は「カスケードリサイクル(元の製品より品質や価値が低い製品へのリサイクル)」と呼ばれることが多いですが、廃棄物を減らし、バージン素材の使用を抑制するという点で、非常に重要な役割を担っています。



【ケミカルリサイクル】再び衣類へ戻る繊維to繊維の製品

近年、技術開発が急速に進んでいるのが、古着を再び衣類や繊維製品に戻す「水平リサイクル(繊維 to 繊維)」です。これが本来であれば、資源循環の理想の形といえます。


1. ケミカルリサイクルによるポリエステルの再生

ポリエステル製の衣類を化学的に分解し、石油由来の原料と同等の品質に戻してから、再びポリエステル繊維を製造する技術です。従来の「ペットボトルから衣類へ」のリサイクルに加え、「衣類から衣類へ」の循環が可能になっています。品質劣化がほとんどないため、何度でもリサイクルできる可能性がありますが、設備投資や処理コストが高額になる傾向があります。

2. 裁断・反毛による再紡績

綿やウールなどの天然繊維を含む古着を色別に選別し、反毛して綿状に戻した後、再び糸(リサイクル糸)を紡ぐ手法です。染色工程を省くことで水やエネルギーの使用量を削減できるメリットがあります。例えば、回収したデニム製品を粉砕して混ぜ込み、独特の風合いを持つ新しいデニム生地を作る取り組みなどがアパレルブランドで進められています。


水平リサイクルは技術的なハードルが高い分野ですが、廃棄を根本から減らすことが出来る点と、「服を捨てない」というブランドメッセージを消費者に強く訴求できることは大きなメリットです。



立ちはだかる課題、デメリット

繊維リサイクルには解決すべき課題も残されています。例えば工業用ウエスは最終的に使い捨てされ、主要な用途である自動車内装材も、将来的な自動車需要の減少により活用先が縮小する懸念があります。また、これらは普段目に触れない場所に利用されるため、リサイクルの価値や実感が消費者に伝わりにくい点もデメリットです。

一方、理想的な手法とされるケミカルリサイクルも万能ではありません。市場に流通する衣類の6割以上を占める「混紡繊維」は処理が難しく、厳密な素材選別が求められるため、実際に再生できる衣類は限られているのが現状です。真の循環型社会を実現するには、こうした用途の限界や技術的な壁を乗り越える必要があります。




注目される「アップサイクル建材」としての活用





先述の通り、これまでリサイクル素材といえば、「見えない部分」に使われる裏方的な存在が主でした。しかし近年、マテリアルリサイクルの手法を応用して作られる新素材で、廃材の持つストーリーや素材感をあえてデザインとして見せる「アップサイクル建材」が注目を集めています。GREEN FLAGが手掛ける再生繊維フェルト材Rebornfiber®もそのような新素材のひとつであり、活用の幅が広がっている分野の一つです。



オフィス・店舗の内装デザインにおける導入事例

GREEN FLAGのRebornfiber®を例に、アップサイクル建材用途での導入事例をご紹介します。サステナビリティを重視する企業や行政施設、感度の高い商業施設で導入が進んでいます。


1. テーブル・什器



Rebornfiberボードを使用したテーブルは、企業の環境姿勢を象徴するアイコンとなります。「このテーブルは、かつて誰かが着ていた服からできています」というストーリーの存在によって、会話のきっかけにもなり、企業のCSR活動も自然な形でアピールできます。


2. 店舗の壁面・ディスプレイ



ショップやカフェの内装材としての採用事例です。コンクリートや木材とは異なる温かみのある質感は、空間に柔らかいアクセントを加えます。特にアパレル店舗においては、自社で回収した古着をボード化し、それを店舗の什器として使うことで、顧客に対して目に見える形でのリサイクル・ループを提示できます。


3. サイン・看板



エントランスの社名ロゴや案内表示の素材として利用するケースです。無機質なアクリルや金属の代わりに繊維ボードを使うことで、環境配慮型企業としてのブランディングに直結します。



マテリアルリサイクル製品を選ぶ際の品質・機能性



環境配慮への意識が向いているとはいえ、「環境に良いから」という理由だけでリサイクル製品は選ばれません。ビジネスの現場で採用される製品には、従来品と同等、あるいはそれ以上の「品質」と「機能性」が求められます。ここではRebornfiber®が選ばれているポイントに焦点を当てて解説していきます。


吸音性・断熱性など、素材独自の機能を活かす設計である


吸音メカニズムの活用

水と接着剤を使わずに製造され、繊維が複雑に絡み合った多孔質構造は、音の振動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収する性質を持っています。この特性を活かし、オープンスペースのオフィスの間仕切り(パーテーション)や、Web会議用ブースの壁装飾材として導入するケースが急増しています。反響音を抑え、会話を聞き取りやすくする効果は、働きやすい環境づくりに直結します。

高い断熱性能

繊維の間に空気の層を含むため、熱伝導率が低く、断熱効果に優れています。床材として使用することで、室内の空調効率を高め、省エネ効果(電気代の削減)にも寄与します。


このように、リサイクル製品の導入は単なる環境貢献だけでなく、オフィス環境の快適性向上やランニングコストの削減という実利的なメリットを提供できるかどうかで決まります。



デザイン性と環境貢献度のバランス

製品選定において重要になるのが、デザイン性と環境貢献度のバランスです。 かつてのリサイクル製品は、「色がくすんでいる」「見た目が悪い」といったネガティブなイメージを持たれることもありました。しかし現在は、選別技術の向上やデザインの工夫により、洗練されたプロダクトが数多く生まれています。


あえて「ノイズ」を楽しむ

完全に均一な色を目指すのではなく、混入する異色繊維をテクスチャとして活かすデザインがトレンドです。

着色や表面加工の技術

表面にプリントを施したり、特定の色の古着だけを集めて色味を統一したりすることで、ブランドイメージに合わせたカスタマイズも可能になっています。


さらにGREEN FLAGの場合は、企業や団体から預かった廃棄繊維でオリジナル原料のRebonfiberを制造しているため、企業単位の「色」を反映したリサイクル素材を生み出すことが可能です。クライアント企業のブランドトーン&マナーを損なうことなく、環境価値を付加できる最適な素材の開発をサポートしています。



私たちが提案する「捨てない」選択肢とこれからの製品開発




ここまで、古着がどのようにして新たな製品へと生まれ変わるのか、その多様な可能性についてご紹介してきました。

株式会社GREEN FLAGが目指しているのは、単に不用品を回収して処理するだけの「静脈産業」にとどまることではありません。回収した資源に新たな命を吹き込み、再び社会の中で愛される製品として還流させる「動脈産業」との架け橋となることです。

これからの製品開発においては、以下の3つの視点が重要になると私たちは考えています。



「Design for Recycling(リサイクルのためのデザイン)」

製品を作る段階から、将来リサイクルされることを想定して素材や構造を設計すること。



「Storytelling(物語の伝達)」

その製品がどのような経緯で再生されたのか、背景にあるストーリーを可視化し、消費者の共感を呼ぶこと。



「Closed Loop(完全循環)」の構築

自社から出た廃棄物を、自社の製品や資材として戻すクローズド・ループの実現。



私たちは、繊維リサイクルに関する豊富な知見とネットワークを活かし、企業様の廃棄物削減から、アップサイクル製品の企画・開発、そして導入までをワンストップで支援いたします。

「倉庫に眠っている大量の在庫処分に困っている」「オフィスの移転を機に、環境配慮型の内装を取り入れたい」「自社の廃棄繊維を使ってノベルティを作りたい」といったご要望がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。

「捨てる」という選択肢をなくし、資源が美しく循環する未来を、私たちと一緒に創り上げていきましょう。




当社ではお客様からお預かりした廃棄繊維をボード化・シート化して、企業活動のお役に立つ新しい材料としてお戻しするサービスを行っています。古着、繊維くず、ユニフォーム、リネンなど、作業着やユニフォームに限らず繊維であれば何でもご相談可能です。詳しい事業内容をご覧になりたい方はGREEN FLAG事業紹介ページをご覧ください。




執筆者



Noriko Yokokura

廃棄繊維を資源化し、サーキュラーエコノミーを実現したい企業の事業支援を行う素材のメーカー、株式会社GREEN FLAGにて営業企画を担当。廃棄繊維ゼロを目指す様々な事業のサポートを通じて学んだ知識を活かし、環境問題や社会課題についてみなさんにわかりやすいカタチで発信します。




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