当社の考え
2025/11/18
障がい者就労支援の現実と希望―わたしたちがそれを支える理由
当社は、ホームぺージにも記載されているように、お客様からお預かりした制服や衣料品の、機械投入前に必要な分解作業(前さばき)を岡山県内のB型障がい者就労施設に委託していますが、最近、就労継続支援の事業所をめぐる不法行為・不正申請の疑い・摘発がいくつか報じられており、心を痛めています。働くことは、すべての人に平等に与えられた権利です。しかしながら、障がい者の就労現場では、その権利が制度の歪みや経営の都合によって踏みにじられている現実があると思いましたので、今回は「障がいのある人の働く意欲」と「社会の支援」について、わたしたちが取り組んでおり、また考えていることをまとめてみます。
障がい者就労支援制度 - 「A型」と「B型」
日本の障がい者就労支援制度には、「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」という二つの仕組みがあります。どちらも、一般企業で働くことが難しい障がいのある人たちに働く場を提供し、自立を支援する目的で設けられています。しかし、両者の性格は大きく異なります。A型事業所は、障がいのある人と雇用契約を結び、労働基準法の適用を受ける「雇用型」の施設です。最低賃金以上の給与が支払われ、社会保険の加入も認められます。対象は、一般就労に向けた準備が整いつつある人たちであり、職業訓練と実務経験を積むことで将来的な社会参加を目指します。実際の仕事内容は、清掃や製造補助、データ入力、軽作業など多岐にわたります。
一方のB型事業所は、雇用契約を結ばない「非雇用型」です。作業量に応じて工賃が支払われますが、その平均月額は全国でおよそ1万6,000円前後にとどまっています。働く時間は柔軟で、体調や能力に合わせた支援が中心です。社会参加や生活リズムの回復を目的とする人が多く、リハビリや日中活動としての役割も大きいといえます。B型は「社会とつながるためのステップ」、A型は「社会へ戻るための準備」と位置づけることができます。本来、この二つの形は互いに補完し合い、障がいのある人々が段階的にステップアップできるよう設計されています。ところが、現実の現場では、その理想が必ずしも実現していません。
不正が起こる制度の歪み
近年、全国のA型事業所を中心に不正受給事件が相次いでいます。大阪市では2024年、障がい者就労支援事業を展開する福祉関連会社が、約 27億円もの給付金(報酬・加算金)を、契約や勤務実績を水増しして不正に受け取っていた疑いで監査を受けました。グループ内で一度退所させた利用者を再入所させ、「一般就労に移行した」と偽装する手口が明らかになっています。こうした“循環的雇用”により、給付金が過大に支給されていたのです。札幌市でも同様に、架空の勤務実績を申請して1億円以上の給付金をだまし取った事件が報じられています。B型事業所でも、実在しない利用者を登録したり、出勤簿を改ざんして報酬を請求したりする小規模な不正が確認されています。いずれも、経営の不安定さと制度設計の歪みが背景にあります。制度の報酬体系は「利用者の数×単価」で算出されるため、事業所にとっては“人数を増やすこと”が経営の柱になります。支援の質を高めても報酬は変わらず、結果として「支援よりも実績」「理念よりも数字」が優先されやすい構造が生まれているのです。そこに行政監督の限界、人材不足、モラルハザードが重なり、不正が発生しやすい環境が出来上がってしまっています。
福祉と経営のあいだにある現場の苦悩
こうした問題の根底には、「福祉」と「経営」を両立させにくい構造があります。福祉の理念を守ろうとすれば赤字に陥り、経営を優先すれば支援の質が低下する。その狭間で、多くの現場が苦しんでいます。B型事業所では特に深刻で、継続的な仕事の発注が少ないため、経営の安定化が難しいのが現状です。厚生労働省によると、全国のB型事業所は約1万3,400か所ありますが、その多くが単発の作業や委託業務に頼っています。
月額工賃が低い最大の理由は、定期的に受託できる仕事が少ないためです。仕事がなければ訓練も報酬も生まれず、結果として自立の機会が遠のいてしまいます。働きたいという気持ちはあっても、仕事そのものが届かない――それが現場の現実なのです。わたしたちGREEN FLAGも、再生繊維ボードを製造する過程で、衣類の分解や前さばき作業をB型事業所に依頼しています。その現場で感じるのは、彼らがいかに真摯に働いているかということです。障がいを抱えながらも、手を抜かず、丁寧に、真剣に仕事に向き合う姿勢には心を打たれます。彼らは決して“支援される側”ではなく、“共に働く仲間”なのです。
GREEN FLAGの使命 ― 継続的な仕事をつくること
障がい者就労の課題を根本から解決するには、「一時的な寄付や施し」ではなく、「持続的に仕事を生み出す仕組み」をつくることが不可欠です。わたしたちGREEN FLAGは、リサイクル繊維を原料とした環境素材“Rebornfiber®”の製造を通じて、就労支援施設に安定的な仕事を提供することを使命としています。B型事業所では、ボタンやファスナーを除去する前処理や素材の選別といった工程を担っていただいています。今後は設備を拡充し、素材仕分けシステムの導入や製品加工機材の整備によって、さらに多様な作業を依頼できる体制を整える予定です。単発ではなく、年間を通じて継続的な業務を発注できるようにすること。それが、事業所の経営安定につながり、障がいのある方々の生活を支えることになると考えています。経営が安定すれば、障がいのある人たちは安定した仕事と収入を得られ、職員も安心して支援に専念できます。私たちの役目は、そうした「支援の持続性」を経済の力で支えることにあります。福祉を“守られるもの”から“共に作るもの”へと変えていくこと。それがGREEN FLAGの責任です。
地味な仕事こそ、未来を支える仕事
私たちの事業は華やかなものではありません。地味で、手間がかかり、効率的とは言い難い工程の連続です。けれども、この「地味な仕事」が未来の地球を守る礎になると信じています。Rebornfiber®は、廃棄衣料を再び素材として生まれ変わらせる循環型の仕組みを実現します。その過程で、障がいのある人たちが自らの手で地球環境を守る一員として働いている――そのこと自体が、サーキュラーエコノミーの精神そのものです。100年後の地球をどう残すかは、私たち一人ひとりの選択にかかっています。働く意欲を持つすべての人が、環境を守る仕事に関われる社会。障がいの有無を超えて、誰もがその循環の中に参加できる未来。それこそが、私たちGREEN FLAGが描く「誰も取り残さない持続可能な社会」です。
共に働く喜びを未来へ
働くことは、ただ収入を得る手段ではなく、人が社会とつながる最も根源的な行為です。障がいがあるからこそ、その働く喜びを実感したいと願う人が多くいます。その気持ちに応えるためには、仕事そのものを生み出し、継続的に届ける仕組みを持つ企業が必要です。不正や制度の歪みが報じられる一方で、現場では「まっすぐに働きたい」と願う人々が確かにいます。その純粋な思いを支えるのが、私たちGREEN FLAGの役目です。小さな一歩であっても、それを積み重ねていくことが、やがて社会を変えていく力になると信じています。
地球を守ることも、人を支えることも、どちらも「未来への責任」です。わたしたちはこれからも、働くことを通じて人と地球をつなぎ、共に幸せを分かち合える社会を築いていきます。




