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当社の考え

2025/09/19

「Z世代って何を考えているの?」―「わからない存在」としてのZ世代

「最近の若者は何を考えているのか、さっぱりわからない」。そんな声が、職場のミーティングや上司同士の雑談で飛び交うようになったのは、ここ10年ほどのことかもしれません。彼らが発する「やりがいよりも自由が大事」「評価されたいけど競争はしたくない」といった言葉に、違和感や戸惑いを覚える人は少なくありません。その「わかりにくさ」の正体は、実は世代間の価値観のズレ――すなわち時代背景と育ってきた環境の違いにあります。特に「Z世代」と呼ばれる1990年代後半から2010年頃までに生まれた若者たちは、従来の働き方や価値観に強い疑問を抱きながら、自分らしさと社会との調和を模索しています。今回は、Z世代の思考や行動原理を丁寧にひも解きながら、彼らとどう向き合うべきか、どのように共に未来を築いていけるのかを考えてみたいと思います。



デジタルネイティブと不確実性の時代を生きる



Z世代は「デジタルネイティブ」とも呼ばれ、生まれたときからインターネットやスマートフォンのある世界で育ってきました。彼らにとって、情報とは“探す”ものではなく、“流れてくる”ものであり、SNSや動画を通じて世界のリアルタイムな出来事と常に接しています。また、彼らの成長期は、リーマンショックや東日本大震災、パンデミックなど、予測不能な事態が次々と発生した時代でした。終身雇用や年功序列といった「安定神話」はすでに崩れ、正解が見えにくい社会の中で、「正しい努力さえすれば報われる」という前提が成り立たなくなっています。こうした背景の中で育ったZ世代は、「組織に依存せず、個人としてどう生きるか」を常に意識しながら、自分なりの安心や納得を求めて行動しています。



Z世代の“矛盾するように見える”価値観の本質



Z世代はしばしば「主体性がない」「打たれ弱い」「仕事に熱意がない」と誤解されがちです。しかし彼らの本音に耳を傾けてみると、むしろ“自分の価値観に忠実でありたい”という強い意思が透けて見えてきます。たとえば、成果を求められる場面では「認めてほしい」と思いながらも、競争や上下関係には拒否感を示すことがあります。これは、“誰かを蹴落としてまで認められたくない”という倫理的な価値観に基づいています。また、「仕事に没頭したいが、仕事に人生を捧げたくはない」と考えるのも、“人生は仕事だけではない”という当たり前の感覚に立脚しているのです。こうした“矛盾して見える感情”の背景には、効率や成果だけでは測れない、Z世代特有の「意味」や「納得感」を重視する志向があります。彼らは決して怠惰なのではなく、むしろ「どうせ働くなら、自分にも社会にも意味のあることをしたい」と、非常に現代的な感性を持っていると言えるでしょう。



「正論」より「対話」―向き合うために必要なこと



では、Z世代とよりよい関係を築くためには、どのような姿勢が求められるのでしょうか。第一に必要なのは、「答えを押し付けない」ことです。上司や経営層の側からすると、「なぜできないのか」「普通はこうだ」といった正論を投げかけたくなる場面は多いかもしれません。しかし、それはZ世代にとっては“思考停止の指示”に映りがちで、彼らの思考や感情を封じ込めてしまいます。第二に重要なのは、「問いかける」ことです。「どうしたらやりやすくなると思う?」「あなたならどうする?」という対話を通じて、彼ら自身が考え、選び取るプロセスを大切にすることで、主体性と責任感が自然と育ちます。第三に忘れてはならないのが、「個を尊重する」ことです。「みんな同じようにやれ」という指示よりも、「あなたはどうしたい?」という視点を持つことが、Z世代にとっての安心感や信頼に直結します。つまり、Z世代に対しては、「型にはめる」のではなく、「可能性を開く」関わり方が求められているのです。



世代間ギャップを乗り越える鍵は「未来志向」



Z世代とのすれ違いを「世代間ギャップ」として片付けるのは簡単です。しかし、そこには実は「社会がどこに向かっているか」という大きな兆しが隠されています。Z世代が重視する「自分らしさ」「意味」「多様性」「サステナビリティ」といった価値観は、社会全体が向かおうとしている方向そのものです。つまり、彼らの考え方は“問題”ではなく“先取り”とも言えるのです。もし、Z世代の声に耳を傾けることができたなら、それはただの若者理解では終わらず、企業や組織が未来にシフトするためのヒントとなるでしょう。彼らを「変えよう」とするのではなく、「変化の兆し」として捉える――それが、これからの時代を共に生きる私たちの知恵であり、責任なのです。



Z世代と共に未来をつくるために

「Z世代は扱いづらい」「何を考えているかわからない」。そう感じる場面は、これからもあるかもしれません。しかし、その“わかりにくさ”を解きほぐす鍵は、私たち自身が持っています。彼らは「価値観の異なる他者」であると同時に、「未来をともに築く仲間」でもあります。対話を重ね、違いを理解し、共通の未来に向かって歩むことで、Z世代との関係は大きな可能性へと変わるでしょう。Z世代を「特別視」する必要はありません。ただ、「今」という時代を映し出す存在として、彼らから学び、ともに創っていく覚悟こそが、これからの組織や社会を進化させる原動力になるはずです。そのようなわけで、これからもZ世代について考えていきたいと思っています。







執筆者


有村芳文

株式会社GREEN FLAG 代表取締役。




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