当社の考え
2025/09/19
戦争は環境に対する最大の裏切りーGREEN FLAGの使命
戦争は、単なる人道の危機ではありません。私たちが構築しようとする「持続可能な社会」そのものを根底から破壊する、極度に暴力的で、環境に対しても甚大な被害を与える行為です。SDGsが掲げる多くの目標――「平和」「健康」「教育」「持続可能な都市」「気候変動対策」「海洋・陸上生態系の保全」などは、戦争が始まった瞬間に軒並み打ち砕かれます。私たちが日々、小さな行動を積み重ねて築いている「サステナビリティ」という概念は、爆弾や砲弾の前では無力です。戦争がもたらす環境への被害は、決して副次的な損害ではなく、戦争そのものが地球規模の環境破壊装置であると捉えるべきです。
数字が語る「戦争の環境破壊」
例えば、ロシアによるウクライナ侵攻では、1億7,500万トンのCO₂排出が発生したと報告されています。これは、ガソリン車9,000万台が1年間走行した場合の排出量に匹敵します。さらに、3年間の累積で見れば2億3,000万トンを超えるという試算もあり、これは世界で最も排出量の多い国の一つであるイタリアの年間排出量に近いレベルです。一方、イスラエルとガザ地区における戦闘でも、1.89百万トンの排出が生じたと推定されており、その後の瓦礫処理やインフラ再建により、さらに3,100万トンを超える温室効果ガスが排出されると予想されています。これらは単なる「兵器使用による副次的影響」ではなく、戦争そのものが一大環境破壊装置と化していることを示しています。
環境だけでない、循環モデルの破壊
戦争による破壊は、地球資源の循環の流れを分断させます。持続可能な製品設計や省資源型のサプライチェーンが日々努力によって築かれている中で、戦争はそれらを全否定し、大量の廃棄物・汚染物・不可逆的破壊を生み出します。被爆による土壌や水質の汚染、燃料の使用、爆弾の破裂によって空気中に拡散する有害物質――これらはすべて、サーキュラーエコノミーが前提とする「資源の健全な循環」と対極にあります。特に、都市インフラや農地、森林、湿地などの自然資源が失われることは、その土地の地域経済にも大きな痛手を与え、長期的な復旧すら困難にします。
戦争の言い訳と、真の目的
戦争や武力衝突は、たいてい「国益」や「正義」の名の下に行われます。為政者は、「国民を守るため」「民族の誇りのため」「領土の回復のため」などと主張します。しかし実際には、それは一部の支配層の立場や権力構造を守るための行為であることがほとんどです。常に国民、市民は不安感を煽られ、群集心理によって、個個自らの正義と思い込むのです。土地や資源、宗教や民族の対立といった「争いの種」は常に存在しますが、現代社会においては人類の努力により、それを回避、解決するための外交・法制度・経済協力の枠組みは整ってきています。だが、それでも戦争が起きるのは、「話し合いではなく暴力で押し切ろう」とする一部の身勝手で、短絡的な意思決定がなされるからです。戦争は、人間社会の知性や倫理の敗北であると同時に、地球環境に対する暴挙でもあるのです。
戦争を回避するために、人類が行ってきた努力
人類は、戦争を防ぐために様々な取り組みを重ねてきました。戦争を生まないための知恵と仕組みは、決して無かったわけではありません。
(1) 国際連盟・国際連合の設立
第一次世界大戦を経て「二度と同じ過ちを繰り返さない」ために設立されたのが国際連盟、そして第二次世界大戦後に発足したのが国際連合(UN)です。国際連合は「戦争のない世界」を前提に、安全保障理事会や平和維持活動(PKO)などの枠組みをつくってきました。
(2) 軍備管理と核兵器規制
1968年の核拡散防止条約(NPT)をはじめ、戦略兵器制限交渉(SALT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)など、兵器の開発と使用を制限するための努力も続けられてきました。軍備のコントロールは、「暴力の抑止」として重要な役割を果たします。
(3) 外交交渉・多国間協調
国家間の紛争を平和的に解決するために、国際社会は多国間外交や集団安全保障体制(NATOなど)を構築。地域紛争の調停、経済制裁による牽制、和平交渉の仲介など、多角的なアプローチが試みられてきました。
(4) 教育と啓発活動
世界中の学校教育や国際NGOによって、「平和の尊さ」や「戦争の愚かさ」について学ぶ機会も増えてきました。国際人道法やジュネーブ条約の啓発、非戦運動、戦争博物館や記憶の継承も、戦争を繰り返さないための文化的基盤となっています。
(5) 経済的相互依存の強化
「戦争よりも貿易の方が利益になる」という思想のもと、経済的な相互依存(グローバル化)も平和の抑止力とされてきました。特にEUなどはその好例で、加盟国間の戦争が現実的に起きにくくなっています。
これらの努力にもかかわらず、戦争は未だになくならないという現実があります。しかしそれは「無意味だった」のではなく、むしろ「それでもなお暴力を選ぶ愚かさ」が残っていることの証なのです。
戦争は、私たち全員の問題である
世界には、20億人以上が紛争地域に住んでいると言いわれています。つまり、地球上の約4人に1人が、戦争の影響を受けているということになります。それは決して「遠い国の話」ではありません。難民の発生、資源の高騰、物流の停滞、インフレ、エネルギー価格の不安定化など、私たちの暮らしにも深く結びついています。そして、忘れてはならないのは、一度環境が破壊されてしまえば、その回復には何十年もの時間と莫大な資源が必要になるということです。今、私たちが「環境に良いことをしよう」「サステナブルな社会をつくろう」と必死に取り組んでいるその努力が、戦争によって一瞬で消し去られてしまう現実があるのです。
戦争をなくすとは、未来をつなぐ覚悟
多くの人は「戦争のない世界」を望んでいます。しかしそれは、単に「人が死なない」ことを願うだけではありません。私たちが生きていくための地球そのものを守る覚悟でもあるのです。戦争は命を奪い、暮らしを壊し、そして何より、取り戻せない環境資源を破壊し尽くします。その犠牲の上に、未来など築けるはずがありません。だからこそ、軍備の縮小や外交交渉、国際協調といった制度的な努力に加え、私たち一人ひとりが「戦争とは何か」「何を失うのか」を深く理解し、声を上げ、選挙での一票、消費行動、メディアとの関わり方など、日々の暮らしの中から行動することが問われています。「戦争をなくす」とは、単なる感情論ではなく、地球という共通資産を守り、次の世代に受け渡すという社会全体の意志なのです。サーキュラーエコノミーやSDGsが描こうとする未来の最大の敵は、戦争です。どんな理由であれ、武力に訴えることは、未来の子どもたちの命を削る行為であり、地球の持続可能性に対する重大な背信行為であると、私たちは認識すべきではないでしょうか。
私たちGREEN FLAGは、「未来のために『大気』と『土』を守る。」というPurposeのもと、循環と持続の思想を社会に広げることを使命としています。だからこそ、戦争という「断絶」の構造に強く抗います。廃棄される衣服をもう一度社会に還すように、分断ではなく再生を信じ、「壊す」のではなく「つなぐ」ことを選び続けるのです。環境、社会、経済、そして命。これらを持続可能にする唯一の道は、「破壊しないこと」、すなわち戦争をしない世界を創ることに他なりません。私たちは、その実現に向けて、事業を通じて、そして日々の小さな選択の中で、未来への誓いを果たしてまいります。