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当社の考え

2025/09/12

地球温暖化と気候変動―経営者として考える「被害を減らす時代」

「抑える」から「どう減らすか」へ

地球温暖化と気候変動の影響は、すでに世界のあらゆる地域で現実化しています。猛暑、集中豪雨、山火事、巨大台風――異常気象は「想定外」ではなく「日常のリスク」となりました。さらに氷床の融解による海面上昇は、沿岸都市や島国の存続そのものを脅かしています。私は経営者として、この状況を「社会のリスク」であると同時に「企業のリスク」として受け止めています。これまでは温室効果ガスの削減、いわゆる「抑制」が中心でしたが、今後10年は「どう被害を減らすか」という適応策が欠かせません。これは経営においても同じで、環境変動を織り込んだ戦略が求められる時代に入ったのです。



事業活動への影響―見えにくいコストの拡大



気候変動の被害は単なる自然災害にとどまりません。農業や漁業が打撃を受け、食料価格が高騰すれば、消費市場は不安定化します。都市ではインフラの損傷や熱中症の増加が社会コストを押し上げます。これらは巡り巡って企業活動に直結します。私は長年、上場企業の経営に携わる中で「見えにくいコスト」の存在を実感してきました。災害や気候リスクは、数字の上では一時的な損失に見えても、社会全体の信頼や市場の安定を揺るがします。したがって経営者は、短期的な利益だけでなく、中長期の気候リスクを事業戦略に組み込む責任があるのです。さらに重要なのは、これを「リスク管理」として受け身に捉えるのではなく、「成長機会」として積極的に取り込む姿勢です。環境対応を先んじて実行した企業は、新たな市場を切り開くことができるからです。



適応策と企業の責任



これからの時代に求められるのは「被害を最小化する仕組みづくり」です。都市であれば集中豪雨に備えたインフラや緑地の拡充、農村では高温に強い作物や水資源管理の強化。医療分野では熱波や感染症への対応が不可欠です。企業も例外ではありません。製造拠点の安全性確保、サプライチェーンの強靭化、働く人の健康対策など、事業活動を守るための適応策を整える必要があります。私は「環境に配慮すること」はもはやCSR(社会貢献)ではなく、「企業を持続させるための経営判断」であると考えています。そして、社会全体の被害を減らすために、企業が担える役割は決して小さくありません。むしろ、企業こそが最も迅速に行動できる主体だと感じています。



サーキュラーエコノミーの可能性



私は現在、再生繊維フェルトを製造するGREEN FLAGを経営しています。廃棄衣料を原料にした素材づくりは、単に資源を守るだけではなく、循環を通じて社会のリスクを和らげる試みでもあります。直線型経済では「使い捨て」が前提となり、環境負荷とともに不安定要因を拡大します。これに対し、循環型経済は「余剰や廃棄を資源として再び組み込む」ため、持続性と安定性を高めます。経営者の立場から言えば、サーキュラーエコノミーは環境課題への解答であると同時に、社会的格差や地域の疲弊を和らげる仕組みにもなり得るのです。資源や人材を循環に組み込むことができれば、地域経済は強くなり、社会全体の耐性も高まります。



未来への責任――経営と社会をつなぐ視点



気候変動の被害を減らすために必要なのは、「待つ」のではなく「動く」ことです。政府や自治体だけでなく、企業経営者が意思を持ち、事業活動を通じて社会のレジリエンス(回復力)を高める行動をとることが不可欠です。私はこれまで、金融市場から製造業、そして起業へと歩んできました。そのすべての経験から確信しているのは、「企業経営は社会の一部であり、社会の安定なくして企業の繁栄はあり得ない」ということです。地球温暖化や気候変動の課題にどう向き合うかは、企業の存続条件そのものなのです。次の10年は、「環境にどう対応するか」が経営者にとって最大の課題となります。抑える努力と被害を減らす工夫、その両立を経営の中で実現していくことこそ、次世代に残せる最大の責任だと考えています。そしてその挑戦は、環境を守るだけでなく、経済格差を縮め、社会の信頼を取り戻す道筋にもつながるはずです。







執筆者


有村芳文

株式会社GREEN FLAG 代表取締役。




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