当社の考え
2025/09/12
「任せる」とはどういうことか─その本質と誤解
多くの職場で「任せる」という言葉が軽々しく使われています。「あとは任せたよ」「好きにやっていいから」など、一見すると信頼に基づいた発言のように聞こえるかもしれません。しかし、実際にその任された側は、途方に暮れ、何をどうすればいいのか分からないまま放置されている――そんな状況に陥っていることが少なくありません。
本来の「任せる」とは、単なる作業の委譲ではなく、責任・裁量・目的を含めた包括的な委任であり、相手への信頼と支援の意思を明確に示す行為です。しかし、多忙な管理職やリーダー層が業務に追われる中、「任せる」という言葉が「自分で考えて進めておいて」といった“思考の放棄”や“責任の切り離し”として使われがちです。このようなケースでは、実際には任されていないにもかかわらず、建前として「任せた」とされてしまうため、ミスが起きれば「なぜ報告しなかったのか」と責められ、うまくいけば「私の指示通りやってくれたね」と手柄を取られるような不信の構造が生まれてしまいます。これでは、組織における信頼や心理的安全性は育まれません。
「任せる」とは、目的・責任・支援を明確にすること
では、本当の意味で「任せる」とはどのような行為なのでしょうか。
「任せる」には、次の三つの要素が必ず含まれるべきです。
①目的と背景の共有
何のためにこの仕事をするのか、その仕事が組織や社会にどんな意味を持つのかを、きちんと伝えること。これがあって初めて、任された側は意義を持って取り組むことができます。
②期待と責任の明確化
「いつまでに」「どのようなアウトプットが必要か」「誰が最終的に責任を持つのか」といった点を具体的に示すことが必要です。任せた以上、口を挟まないのではなく、適切なレビューや相談のタイミングも含めて設計すべきです。
③信頼に基づいた支援の継続
任せるというのは、見放すことではありません。困ったときには相談に乗り、必要があれば軌道修正を促すなど、伴走する姿勢が重要です。信頼とは放任ではなく、対話と気遣いに基づく連携なのです。
これらを欠いた任せ方は、単なる丸投げです。そしてそれは、相手の能力や可能性を信じていないことの表れでもあります。言い換えれば、「任せ方」はその人のリーダーシップの質を映す鏡であるとも言えるのです。
誤った「任せ方」が組織をむしばむ
誤解された「任せる」は、職場に次のようなさまざまな弊害をもたらします。
●責任の所在が曖昧になる
「君に任せたよ」と言いつつ、途中で指示を変えたり、成果物に対して一方的なダメ出しをしたりするケースでは、責任の分担が曖昧になり、受け手は強い不満と不安を抱きます。
●学習機会が奪われる
任された側が悩みを抱えても相談できず、自力での試行錯誤が不十分になると、結果として成果も出せず、成長の機会を失うことになります。これは、組織全体の人材育成にとって致命的です。
●信頼関係が崩れる
一度「これは丸投げだった」と感じた人は、次回以降の仕事にも前向きになれません。「どうせまた放り投げられる」と感じてしまえば、モチベーションも下がり、報連相の質も低下します。
これらの弊害が積み重なると、職場全体が「やらされた感」に支配され、挑戦や創造性が育ちにくくなります。リーダーが任せているつもりでも、実際には人が育たない。そんな悪循環が続いているのです。
GREEN FLAGが大切にする「任せる文化」
私たちGREEN FLAGでは、「任せる」という言葉の重みを日々意識しています。なぜなら、私たちが取り組んでいるRebornfiber®の事業は、前例のないチャレンジの連続であり、社員一人ひとりの創造性や主体性が事業の命綱だからです。そのため、次のような取り組みを実践しています。
目的を語る
業務を依頼する前に、なぜこの仕事が重要か、GREEN FLAGのMissionやVisionとの関係性を丁寧に共有します。「作業」ではなく「意義のあるプロジェクト」として捉えてもらうことを大切にしています。
対話を怠らない
任せた後も「報告を待つ」のではなく、定期的に様子を確認し、困っている点や改善したい点などを気軽に話し合える場を設けています。これは単なるチェックではなく、共に成長する機会として設計しています。
称賛と振り返りを徹底する
成果が出たときには「できたこと」「工夫したこと」「次に活かせること」を全員で共有します。成功体験がチームの財産となり、自然と「任されることが楽しい」「任されたい」と思える文化が育まれています。
「任せる」は権限ではなく信頼
私たちは「任せること=権限を与えること」ではなく、「信頼を渡すこと」だと考えています。だからこそ、相手が自分らしく取り組めるように、土壌を耕し続けるのです。
このような文化が、サーキュラーエコノミーという社会課題に挑む私たちの原動力です。変化に満ちた未来に向かって、全員が「任される側」でもあり「任せる側」でもある組織を目指しています。
信頼がめぐる職場へ
「任せる」という言葉は、時に都合のよい口実として使われてしまうことがあります。しかしその本質は、「相手の力を信じ、共に歩むこと」にあります。現代の職場では、効率性やスピードが優先されるあまり、「説明する時間がない」「考えさせる余裕がない」といった理由で丸投げが蔓延しています。しかし、そうした場面こそ本来、「任せる力」が問われている瞬間なのです。私たち GREEN FLAGは、「任せる」を単なる業務移譲ではなく、信頼と成長の循環として捉えています。Rebornfiber®のように、見えづらい価値を社会に問い続ける私たちだからこそ、人の成長もまた、丁寧に耕していきたい。「任せるとはどういうことか」を問い直すことは、チームの在り方、そして未来の組織の在り方を考えることに他なりません。これからも私たちは、言葉の重みを大切にしながら、「任せる文化」を築いていきます。未来のために、「任せる力」をもっと、社会に。まさに、それもSDG’sであると思っています。