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当社の考え

2025/07/29

制服はただの「布」ではない。|廃棄される衣服にもう一度命を吹き込むということ

日本では、1年間におよそ73.1万トンもの衣服が廃棄されています。多くの人がこの数字を聞いても、実感が湧かないかもしれません。けれども、ひとりひとりが毎年数着の服を「もう着ない」「もう使わない」として処分していることを思えば、遠くない現実なのではないでしょうか。そのうちの48.5万トンが焼却または埋め立てられています。つまり、私たちの生活の中で不要になった衣服の多くが、再び使われることなく、姿を消しているのです。

なかでも見逃せないのが、制服(ユニフォーム)の存在です。学校、部活動、会社、工場、病院、サービス業――。日本の暮らしには、制服が数多く登場します。1日の多くを過ごす場所で着る服であり、ただの仕事着や通学着以上に、その人の時間や経験を吸い込んできた衣服でもあります。 それだけに、役目を終えた制服をただゴミ袋に詰めて捨ててしまうことには、どこか引っかかるものがあります。「ありがとう」と声をかける間もなく、灰や埋土にされてしまうのは、どこか寂しい気がします。

実際に、焼却・埋め立てされる衣服のうち10~15%は制服だとされています。年間でおよそ5万トンから7.5万トンの制服が、静かに処分されていることになるのです。 果たして、それでいいのでしょうか?



制服廃棄の裏に潜むCO₂排出とリユースの難しさ



制服の多くはポリエステルなどの合成繊維で作られており、可燃ごみとして処理しやすいものです。しかし、その裏には化石燃料を原料とした素材が燃やされることによるCO₂の排出があります。また、刺繍や装飾、社名などの入った制服はリユースしづらく、再資源化の対象になりにくいという事情もあります。そんな中で、こうした制服を「素材」としてとらえ直そうというのがRebornfiber®です。使い終えた制服を粉砕・再加工し、フェルト状の再生繊維素材として生まれ変わらせるのです。そしてその素材を用いて、パーテーション、クッション、ベンチ、あるいはバッグや雑貨といった別の製品へと蘇らせるのです。一度は役目を終えた布が、形を変えて再び人の手に渡ります。そこに「新しい使い道」が生まれるだけでなく、「思い出のモノが未来へつながる」という感覚が宿るのです。まるで自然界の枯葉や朽ち木が、土に還って次の命を育むように。繊維もまた循環できるというわけです。価値を変えながら、生まれ変わることができるのです。



「もう一度使う」という選択が生む共感と循環



制服は、単なる衣料品のひとつではありません。感情や記憶と結びついているぶん、廃棄が惜しまれます。だからこそ、「もう一度使う」という選択に、人は共感しやすいのです。企業が社員の制服を回収して再生品に変え、ノベルティやインテリアとして再び社内に還元する。学校が卒業生の制服を再加工し、校内の記念品にする。そういった小さな循環が、各地で静かに始まっています。「環境問題」と聞くと、大きすぎて手に負えないように感じるかもしれません。でも、制服1着から始まる再生の取り組みは、個人が関われる規模で、確かなインパクトを持ちます。地球の資源は有限ですが、組み合わせ方と使い方次第で「価値」は無限に創り出せます。自然界がそうであるように、人の手でも“循環”は生み出せるのです。



ものを尊ぶという文化を未来へつなぐ



役目を終えた制服に、もう一度命を吹き込むことは、ものを尊ぶことそのものではないでしょうか。ただ処分するのではなく、もう一度、別のかたちで活かす。そこには手間もコストもかかります。けれど、その行為のなかに、人の記憶や努力への敬意が込められています。物と人の関係をつなぎ直す、静かで強い選択です。それがたとえ全体のごく一部だとしても、十分に意味があります。ほんのわずかな取り組みかもしれませんが、そこから意識が広がり、行動が変わり、社会が少しずつ動いていくのです。



一枚の制服が示す地球への思い



地球を守るとは、特別なことをすることではなく、身近なものの使い方を丁寧に考えることから始まるのではないでしょうか。

一枚の制服を、灰にするか、未来につなげるか。

その選択は、もしかすると地球全体の行方とも静かにリンクしているのかもしれない。そう思うのです。





執筆者


有村芳文

株式会社GREEN FLAG 代表取締役。




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