当社の考え
2025/07/08
プラスチックと人類|なくてはならぬ存在との「共存」を考えるとき
現代において、プラスチックは“なくてはならぬ素材”として定着しています。食品容器、家電、衣類、医療機器、建材に至るまで、身の回りを見渡せば、プラスチック製品のない生活を想像することは難しい。しかし、この万能素材にも、始まりがあり、そして今、大きな岐路に立たされています。
プラスチックの原点は、19世紀後半、1860年代のアメリカにさかのぼります。当時、ビリヤードボールの象牙の代替を求めていた印刷工ジョン・ハイアットによって、「セルロイド(ニトロセルロース)」が発明されました。これが人類史上最初の人工的な合成樹脂、すなわち“プラスチック”の誕生です。
当時の発明は、自然資源の代替を目的としたものであり、むしろ環境保全の発想から生まれたものでした。それから数10年、プラスチックは徐々に改良を重ねながら、その実用性を広げていきます。
戦争が加速させたプラスチックの普及
転機が訪れたのは、1939年9月1日に始まった第二次世界大戦です。
戦時下、アルミや銅、鉄といった金属資源はすべて軍需に集中し、加えて天然ゴムも供給が制限されました。そんな中、代替資源として一気に脚光を浴びたのが、プラスチックでした。軽量で成形が容易、しかも比較的安価に大量生産が可能──戦時の制約が、プラスチックの産業的可能性を一気に引き出したのでした。
終戦後、プラスチックは民生用途へとその価値を転じました。安価で耐水性・耐久性に優れ、加工性も高い。これまで木や金属、ガラスなどで作られていた日用品の多くが、プラスチックに置き換えられていきました。やがて、合成繊維やフィルム、家電の外装、食品パッケージ、容器類に広く浸透していき、1970年代には“プラスチックの黄金時代”とも呼べる大量消費の時代が到来します。
注目すべきは、当初プラスチックの原料は石油精製の際に捨てられていた副産物だったことです。いわば廃棄物の再利用から生まれたものであり、現在で言えば「サーキュラーエコノミー的」な発想です。大量の天然資源を必要としない、まさに人類の知恵の結晶であり、現代工業社会を形づくる礎でありました。
プラスチックは、戦後の暮らしを快適にし、世界中の人々の生活水準の向上に貢献してきました。それは、例えるならば大阪のホルモン焼きのような存在──かつては捨てられていた部位に価値を見出し、いまや“なくてはならぬ”庶民の味にまで昇華されたように、プラスチックもまた、「再利用の精神」と「現代の生活必需」が結びついた素材なのです。
今問われる「プラスチックとの向き合い方」
しかし今、私たちはそのプラスチックとどう向き合うべきかをあらためて問われています。その最大の理由は、海洋汚染やマイクロプラスチック問題に代表される、環境への深刻な影響です。自然に分解されにくいプラスチックが海に流れ込み、魚介類を通して生態系や人体への影響も懸念されています。使い捨てプラスチックを中心とする大量廃棄の構造は、明らかに限界に来ています。
こうした課題を受けて、現在では再資源化が容易な設計や、バイオマス由来のプラスチック、あるいは生分解性プラスチックといった、次世代素材の開発が進んでいます。これらは、従来の化石資源型プラスチックよりも環境負荷が小さく、持続可能な社会を築くうえで期待されている技術です。
“脱プラスチック”から“共プラスチック”へ
とはいえ、現時点ではこれらの代替素材が十分に社会に浸透しているとは言い難く、コストや性能の課題、インフラの対応不足など、いくつものハードルが残されています。
その象徴的な例が、「紙ストロー」や「竹ストロー」への切り替えだと思います。環境意識から導入されたものの、実際には使いづらさや耐久性の問題から、再びプラスチックストローに戻る店舗や企業も少なくありません。理想と現実のギャップに悩む現場の声も多くあります。
つまり、プラスチックを「悪」として排除するのではなく、どうすればよりよく共存できるかという視点に立つ必要がです。
私たちはいま、“脱プラスチック”ではなく、“共プラスチック”の時代に入ったと考えるべきです。再資源化の技術を高めること。回収・再利用の仕組みを社会に根づかせること。素材そのものの改良を進める一方で、使い方の見直しや、無駄の削減にも取り組むことです。
これからのファッションに必要な視点とは
では、私たちはこの現状をどう変えていけばよいのでしょうか。 企業には環境負荷を最小限に抑えた生産方法への転換が求められます。石炭や天然ガスなど化石燃料に依存した製造から、再生可能エネルギーの活用へ。さらに水の使用を削減する技術の開発や、染色工程の改良、排水処理の徹底が不可欠です。また、サプライチェーンの透明性を高め、搾取的な労働構造をなくす努力も避けては通れません。認証制度の導入やフェアトレードの普及、適正価格での取引を徹底するなど、企業の責任はますます大きくなります。
一方で、私たち消費者も「服を選ぶ基準」を変えていく必要があります。価格やデザインだけでなく、その服がどのように作られ、どこでどのようにリサイクルされるのかを知り、納得した上で選ぶ。この「選ぶ責任」が次の社会を形作るのです。最近では、リサイクル素材を使った服や、リユース・リメイクを楽しむ文化も広がりつつあります。自治体や民間企業による古着回収の取り組みも増えており、再生繊維を使ったインテリアや雑貨へ生まれ変わらせる例も見られます。「新しい服を買わないおしゃれ」という選択肢が、未来のファッションを豊かにしていくかもしれません。
「再利用の精神」を、次の時代へ
それらはすべて、プラスチックとこれからも付き合っていくための“人類の知恵”であり、かつてセルロイドを発明した先人たちの精神を、現代に引き継ぐ行為でもあります。 プラスチックは、かつてサーキュラーエコノミーの象徴であり、人類の生活を支える希望の素材でありました。
いま再び、私たちはその原点に立ち返り、“使い捨て”から“使いこなす”時代へと、意識を更新していくべき時を迎えているようです。
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