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当社の考え

2025/07/08

ファッションの裏側に潜む現実|衣服と環境をめぐる問い

私たちが毎日当たり前のように身にまとっている衣服。その快適さやおしゃれを楽しむ一方で、この「衣服を着る」という行為が、地球環境にどれほど大きな負荷を与えているかを知っている人は、まだ多くはないかもしれません。

実際、衣服・繊維業界は石油産業に次いで、世界で2番目に温室効果ガスを多く排出している産業とされています。全世界のCO₂排出量が年間およそ510億トンと言われる中、衣服・繊維産業が占める割合は8〜10%に相当し、40億〜50億トンにものぼります。 これほど大きな数字の背景には、私たちの消費スタイルの変化が大きく関わっています。1980年代と比べ、2020年には人々が購入する衣服の量は実に3倍以上に増えました。ファストファッションの登場やトレンドの加速によって、衣服はかつてよりも気軽に買い替えられ、捨てられる存在になったのです。



大量生産と大量廃棄が生む無駄とCO₂



毎年、世界ではおよそ1,000億点もの衣服が新たに生産され、そのうち5分の3が購入された年のうちに手放されてしまっています。この驚くべき大量生産・大量廃棄のサイクルが、無駄なエネルギー消費とCO₂排出の根源です。

日本国内でもこの傾向は顕著です。市場規模は1991年の14.7兆円から2019年には10.4兆円へと縮小している一方で、供給される衣類の数はおよそ20億点から40億点へと倍増しました。需要が減っているのに、供給は増え続ける。このアンバランスが、膨大な廃棄につながっています。

2022年、日本国内で新たに供給された衣類は約79.8万トン。そのうち約9割に相当する73.1万トンが使用後に手放され、さらにその66%にあたる48.5万トンが焼却や埋め立てという形で処理されています。廃棄時にもCO₂が排出されるため、これは「見えない排出源」として看過できない問題です。



水と海を汚すファッションの影響




衣服の環境負荷は、CO₂だけではありません。大量の水資源を消費し、さらに海洋汚染を深刻化させていることも大きな問題です。

例えば、デニムパンツを1本作るのに必要な水の量は1,500リットル。これは人間が2年間に飲む水の量に相当します。繊維産業全体では、毎年9,300億立方メートルもの水が使われており、これは500万人が1年間に必要とする水の量とほぼ同じです。 特に染色の工程では膨大な水が使われます。1トンの生地を染めるのに必要な水は1万リットルから最大25万リットルとされ、排水には化学薬品が含まれていることも多いため、周辺の水質汚染にもつながります。結果として、繊維産業は世界の工業廃水の20%を占めていると言われています。

さらに忘れてはならないのが、マイクロプラスチック問題です。合成繊維の衣服は、洗濯するたびに繊維片が剥がれ落ち、排水を通じて海へと流れ込んでいきます。海に流出するマイクロプラスチックの年間総量は約1,300万トンと推計され、そのうちの60%が衣服由来です。

このプラスチックは魚や貝などの海洋生物に取り込まれ、私たちの食卓へと戻ってきます。世界自然保護基金(WWF)は、現代人が毎週、クレジットカード1枚分のプラスチックを体内に取り込んでいる可能性を指摘しています。ファッションのための合成繊維が、遠い海の問題ではなく、私たち自身の健康リスクにつながっているのです。




環境だけではない、衣服に潜む人権課題



ファッションが抱える問題は、環境面だけにとどまりません。衣服の生産過程には、深刻な人権問題も潜んでいます。縫製工場の労働者のうち、生活に必要な賃金を十分に得られている人は、わずか2%にすぎないと言われています。また、世界では毎年およそ250万人もの児童が、綿花の収穫に従事していると推計されています。消費者が安価で衣服を手に入れる一方で、その背景には過酷な低賃金労働や児童労働が存在しているのが現実です。大量生産のコストを抑えるための「犠牲」が、発展途上国の現場で静かに続いているのです。




これからのファッションに必要な視点とは



では、私たちはこの現状をどう変えていけばよいのでしょうか。 企業には環境負荷を最小限に抑えた生産方法への転換が求められます。石炭や天然ガスなど化石燃料に依存した製造から、再生可能エネルギーの活用へ。さらに水の使用を削減する技術の開発や、染色工程の改良、排水処理の徹底が不可欠です。また、サプライチェーンの透明性を高め、搾取的な労働構造をなくす努力も避けては通れません。認証制度の導入やフェアトレードの普及、適正価格での取引を徹底するなど、企業の責任はますます大きくなります。

一方で、私たち消費者も「服を選ぶ基準」を変えていく必要があります。価格やデザインだけでなく、その服がどのように作られ、どこでどのようにリサイクルされるのかを知り、納得した上で選ぶ。この「選ぶ責任」が次の社会を形作るのです。最近では、リサイクル素材を使った服や、リユース・リメイクを楽しむ文化も広がりつつあります。自治体や民間企業による古着回収の取り組みも増えており、再生繊維を使ったインテリアや雑貨へ生まれ変わらせる例も見られます。「新しい服を買わないおしゃれ」という選択肢が、未来のファッションを豊かにしていくかもしれません。




一枚の服が、地球の未来を変える



私たちが毎日袖を通す一枚の服。その背後には、地球の資源、人々の労働、未来の世代への影響が隠れています。環境問題も人権問題も、「服を買う」という行為を通じて必ずどこかでつながっているのです。

これからのファッションは、流行を追うだけのものではなく、資源を大切にし、人や社会を尊重し、次の世代に美しい地球を残す責任を含んだものへと進化していくべきでしょう。「安く、早く、使い捨てる」時代から、「長く愛し、再び生かす」時代へ――。この転換の鍵を握っているのは、企業だけではなく、今この文章を読んでいるあなたの選択なのです。私たち一人ひとりの小さな選択の積み重ねが、ファッションをよりサステナブルで、人にも環境にも優しいものへと変えていく。その未来を、共につくっていきましょう。








当社ではお客様からお預かりした廃棄繊維をボード化・シート化して、企業活動のお役に立つ新しい材料としてお戻しするサービスを行っています。古着、繊維くず、ユニフォーム、リネンなど、作業着やユニフォームに限らず繊維であれば何でもご相談可能です。詳しい事業内容をご覧になりたい方はGREEN FLAG事業紹介ページをご覧ください。




執筆者


有村芳文

株式会社GREEN FLAG 代表取締役。




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