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当社の考え

2025/06/26

「直線の経済」か「循環の経済」かーサーキュラーエコノミーという逆襲の経済思想

これまで「成長」とは、直線で描かれるものでした。掘って、作って、売って、捨てて、また掘って…。大量生産・大量消費・大量廃棄。「直線的成長性」という考え方は、産業革命時に芽生え、19世紀〜20世紀前半にかけて資本主義経済とともに世界に広がりました。

第二次世界大戦後、戦争で失ったものを短期間で取り戻すには、「大量生産・大量消費」による規模の経済が必要不可欠であり、高度経済成長が直線的成長信仰を決定づけました。1970年代のオイルショックなどを経て成長の限界が論じられましたが、1980年代、金融自由化やグローバル経済の進展によって、再び「株主価値最大化」という形で直線的成長志向が強化され、現在に至っています。日本においても、昭和の高度経済成長期も、平成のバブル期も、この線形モデルを信じて疑わなかったものでした。



朽ち始めた「使い捨て」の哲学



しかし今、この「直線」はゆっくりと朽ち始めています。資源が尽きるから? 温暖化が深刻だから? いや、もっと根深い理由があります。経済の根っこにあった“使い捨ての哲学”が、もはや社会と折り合わなくなってきたのです。

使い捨て経済は、1950年代から60年代の高度経済成長期に、大量生産大量消費の考え方と相まって、急速に広まりました。プラスチック製品が日常生活に浸透し、使い捨て容器や食品包装など、様々な分野でガラスや紙からプラスチックへの素材転換が進んだのも、この時代でした。



サーキュラーエコノミーという“逆襲”




「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という言葉は、もともと環境系の隅に追いやられていました。しかしいま、経済のど真ん中に躍り出てきました。なぜでしょうか? それは、この発想が単なるリサイクルの延長ではなく、経済の前提そのものを組み替える“逆襲”の思想だったからです。

リニアエコノミーでは、捨てることが前提にあります。だから作るときに「壊れやすさ」が含まれています。売るためには「飽きられやすさ」も必要となります。修理可能性? 再利用設計? 儲からない。だからやらない。なのです。しかしこの歪な構造は、あまりに多くのものを犠牲にしてきました。モノの価値、技術者の誇り、地域の文化、そして、未来世代の生活可能性。など、など。




経済と倫理を接続する哲学へ



サーキュラーエコノミーが本当に目指しているのは、「資源の再利用」などという小さな話ではありません。それは、“存在の設計”そのものの再定義なのです。製品は、使い捨てられるために生まれるのではありません。使われ続け、直され、分解され、再構築される“旅”の中で、本当の価値を獲得していくのです。その旅を支えるのは、つくり手の誇りと、使い手の思いやりと、社会全体の設計思想です。そう、サーキュラーとは単に循環の仕組みではなく、「経済と倫理を接続する哲学」なのだと思います。

とはいえ、現実の日本社会はまだ「リサイクル」や「省エネ」の延長線でサーキュラーエコノミーを語っている様に見えます。「ゴミを燃やさず再利用するんでしょ?」程度の理解で止まっている企業も少なくないように感じます。しかしそうではありません。サーキュラーエコノミーとは、“ゴミを出さない経済”をゼロから設計し直すことなのです。




つながり続ける経済へ



材料調達、製品設計、物流、販売、アフターサービス、そして廃棄処理までがつながる「全体設計」。これこそが、サーキュラーの本質でしょう。すべてのプレイヤーが“使い終わった先”まで責任を持つ経済。それは、単なる義務ではなく、持続可能性という名の信用経済です。

そして何より重要なのは、この革命に、日本こそが向いていると思うのです。もともと日本人は「もったいない文化」の民です。壊れた傘を直し、着物をほどいて仕立て直す。道具を神棚に祀り、包丁に魂を見る。昭和の工業製品は、捨てどきを忘れるほど長持ちしました。

いま必要なのは、この“記憶された美意識”を、現代技術と経済論理で再構築することではないでしょうか。サーキュラーエコノミーの時代に求められるのは、「壊れないものを、壊れる前提で売る企業」ではなく、「直せるものを、直して使うことを歓迎する企業」であり、「再生を前提として、モノを開発し、創り合う姿勢を持った企業」です。




地方創生の可能性



さらに言えば、サーキュラー経済は都市よりも、むしろ地方や中小企業のほうが得意とする分野でしょう。なぜなら、循環の輪は小さければ小さいほど効率が良く、地産地消で、修理が近くでできるというわけです。

廃材が別の産業の資源になる。分散型社会こそ、サーキュラーエコノミーの理想形です。このことは、日本の地方に再び「経済の意味」を取り戻す可能性を示しています。地方創生は、観光や農業だけで語る時代ではありません。“使い終わったものの価値”を再設計する産業連携こそ、地域経済の次のカタチではないでしょうか。




サーキュラーエコノミーとは、私たちの生きる意味を問うこと



最後に、忘れてはならないのは、「循環」とは、人の関係にも通じる、ということです。売ったら終わりではなく、使う人と、つくる人が、製品を通じて“つながり続ける”経済。切れてしまったらゴミ。つながっていれば、価値。それは“成功の法則”と同じです。諦めたら“失敗”(松下幸之助)。諦めず結果が出るまで続けたら“成功”。サーキュラーエコノミーとは、その名の通り、「関係の経済」です。

破壊ではなく、再生。消費ではなく、共生。使い捨ての時代の終わりに、私たちはようやく“続いていく経済”という選択肢を手にし始めたと言えるのではないでしょうか。それは、地球の話でも、経済の話でもそうです。そして同時に、”私たちがどう生きていくか”という話でもあると思います。

成長の反対は失敗ではなく、行動しないこと(マザー・テレサ)。すなわち、サーキュラーエコノミーの実現とは、私たちが行動することです。








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執筆者


有村芳文

株式会社GREEN FLAG 代表取締役。




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