当社の考え
2025/06/17
苦しい時代(その2) ~循環で社会を再設計する〜

「みんな苦しい」——その苦しさの渦中に、実は企業もまた深く巻き込まれています。 むしろ、多くの苦しみの交差点に立たされているのが、今の企業であると思います。 経営者は孤立しています。
日々変化する経済情勢、上がらない売上、上がり続けるコスト、離職のリスク、借入の不安。誰にも弱音を吐けず、「全部を背負うしかない」と無言で歯を食いしばる日々。その姿を、誰かが見ているわけでもありません。
だからこそ、崩れるときは一瞬です。判断ミスではなく、疲労によって壊れていくのです。従業員もまた、疲弊しています。
成果主義と人員削減の中で、役割は拡大し、責任は増す一方です。 「もっと頑張れ」「今が踏ん張りどころだ」と言われ続け、心も体もすり減っていきます。 企業内での関係性も希薄になり、互いに支え合う余裕がなくなっています。
「なぜ、こんなに苦しいのか」と問う暇さえないまま、日常に追われています。
揺らぐ成長モデルと見えない軸
そして、事業そのものの継続も、年々難しさを増しています。
従来の成長モデルが機能せず、コモディティ化し、価格競争は激化し、差別化が困難になっています。
モノが売れない時代、モノづくりの価値は揺らぎ、サービスの提供にも飽和感が漂っています。 どこに付加価値を置けばいいのか、企業の“軸”そのものが見えづらくなっています。つまり、企業は「経済を支える存在」であると同時に、「この社会構造のゆがみを最もダイレクトに受ける存在」でもあります。
だからこそ、私たちは今、「企業とは何のために存在するのか」という問いを、あらためて投げかけなければなりません。
儲けることは重要です。だが、それだけでは、もう立ち行かないのです。
売上だけで測れない価値が、今ほど求められている時代はないと思います。
希望の鍵としてのサーキュラーエコノミー
では、どうすればよいのか。
いま、注目されているのが「循環」の思想——すなわちサーキュラーエコノミーです。 サーキュラーエコノミーとは、「つくって、使って、捨てる」ことを前提とした直線型の社会から、「使ったあとを価値に変える」循環型の社会への転換を意味しています。
それは単なる環境保護ではなく、経済・社会・人間関係の再構築を指す言葉でもあります。この循環の思想においては、廃棄物や副産物は“ゴミ”ではなく、“未活用資源”として見直されます。
同様に、これまで評価されなかったスキル、人材、技術、地域、信頼といった“見えづらい価値”もまた、再接続され、活かされる対象となります。
たとえば、使用済みの繊維を再資源化して、断熱材や吸音材として使うことで、製造業の資源循環と建築分野の省エネルギーを同時に実現できます。
オフィスで不要になった什器を解体・再設計し、地域の学校や福祉施設で再活用するプロジェクトも生まれています。
企業が単に「不要なものを処分する」のではなく、「社会に役立つ形で循環させる」主体となることで、経済的価値と社会的信用の両方を得ることができるのです。
人と価値の「再循環」が企業を強くする
サーキュラーエコノミーはまた、「価値のつくり方」そのものを変えます。
製品やサービスの“寿命”を延ばし、“再利用”“修理可能性”“共有可能性”といった要素が新たな競争軸になります。
この転換は、売り切りモデルに依存していた企業にとっては大きな挑戦ですが、それ以上に「事業の意味」を問い直す絶好の機会でもあります。
さらに重要なのは、人も循環の対象であるという視点です。人材が定着し、経験や関係性が社内外で循環していくことが、企業にとっての本質的な資源となります。
離職を防ぎ、再雇用を促進し、多様な背景を持つ人々の働く機会を生むのです。
そうした“人の循環”は、企業に知恵と活力をもたらします。
もちろん、循環型の取り組みは時間も手間もかかります。
短期的な利益だけを追えば、かえって非効率に見えることもあるでしょう。 私たちが直面しているこの「みんな苦しい」という時代は、すでに従来の効率性だけでは乗り切れない局面に突入しています。
社会的信用、持続可能性、共感の構築——そうした「目に見えにくい価値」を、企業がどう設計し直すか。
それが、これからの企業経営の核心となります。
流れをつくるというイノベーション
苦しさの正体は、何かが足りないからではありません。
むしろ、流れが滞っているからこそ生じているのでしょう。
経済も、資源も、人の心も、滞っています。
だからこそ、流れをつくること。循環をつくること。
それが、苦しさをほぐし、社会に新たな息を吹き込む方法なのだと思います。
私たちが今、直面しているこの時代は、ある意味で“終わり”のようにも見えるかもしれません。しかし実際は、「価値の転換点」であると思います。
成長の終焉ではなく、再定義の始まりです。
サーキュラーの視点で、企業も社会も再設計されていくことこそが、次の時代の希望につながります。
「苦しさを、希望の入り口に変える」——
この視点こそが、これからの企業、社会、そして一人ひとりに求められている最も根源的なイノベーションではないでしょうか。
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