DOWNLOAD

資料ダウンロード

当社の考え

2025/06/17

苦しい時代(その1) 〜構造化された痛みと、社会に蔓延する静かな叫び〜

「みんな、なんだか苦しそうだね」

そう感じる場面が、日常のあらゆる場面に増えてきました。職場でも、家庭でも、街中でも、SNSでも、どこか空気が重い。疲れている人が多い。余裕のない人が多い。

何気ない会話の中に、ため息やあきらめの言葉がにじんでいる。

この「苦しさ」は、何か一つの原因からくるものではありません。むしろ、それは社会全体に張り巡らされた複雑な網のようなものであり、気づかないうちに私たち一人ひとりを締めつけているように思います。

そしてそれは、静かに、だが確実に広がっています。



暮らし・働き方・将来不安──積み重なる圧力



経済的に見れば、物価は上がっています。

食料品、電気代、ガス、水道、ガソリン、保険料……あらゆる生活コストが上昇しているにもかかわらず、賃金はそれに比例して上がっていません。

数字で見れば「名目上昇」と言えるかもしれないが、実感としての生活はむしろ厳しくなっているように感じます。

ボーナスも上がらない。住宅ローンの負担は増える一方。

将来を見通せないことへの不安が、財布の中身以上に心を圧迫しています。

効率化、生産性向上の下で、人手不足により、少ない人数で回す職場が増えてきました。管理職は部下をケアしながら数字も追わなければなりません。現場の社員は成果主義とコストカットのはざまで擦り切れています。リモートワークによる孤立、対面復帰による緊張、どちらにも不安がつきまといます。「もう疲れた」「明日が来るのが怖い」そんな言葉を胸にしまい込みながら、今日も出勤しています。



誰もが抱える「出口のない不安」




そして、この苦しさの本質は、誰にもはっきりとした“出口”が見えないことにあります。がんばっても、先が明るいとは限りません。努力が報われる保証がありません。 成功者のモデルが描けず、「誰も正解を知らない」時代を私たちは生きています。 家庭に戻っても、安心は保証されません。

子育ては負担が大きく、教育費はかかり続けます。

高齢の親の介護も重なれば、心も身体も限界を超えてしまいます。

一人暮らしであっても孤独の不安が押し寄せます。

結婚していても、していなくても、子どもがいてもいなくても、老後への不安は共通しています。どこにいても、「私はこのままでいいのか」と問い続ける声が絶えません。この社会の重さは、数字にも表れています。

自殺者数は長期的に減少傾向にありましたが、ここ数年で再び上昇しています。 特に管理職、介護者、子育て世代においてメンタルヘルスの悪化が目立ちます。 相談窓口はあっても、つながる勇気が出ません。

「自分よりもっと苦しい人がいる」と、誰かと比べてしまうことで、助けを求めることさえ躊躇してしまいます。




「苦しみ」を語れる社会に向けて



若い世代も苦しんでいます。

正社員になれない不安。住宅を持てない現実。SNSによる過剰な比較。リスクを取る余裕のなさ。

新しいことに挑戦するどころか、現状維持すら難しい状況です。 「失敗できない」というプレッシャーが、希望の芽を摘み取ってしまいます。

一方で高齢世代もまた、長生きすることが“リスク”になっています。年金や医療、介護に関する制度は複雑で不安定。

「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちが強く、誰にも頼れずに苦しみを抱えたまま過ごす人が増えています。

社会全体としても、かつてのような「希望の象徴」が見当たりません。

高度成長期のような「頑張れば報われる」時代は過ぎ去り、バブル崩壊以降、「右肩上がりの未来」は幻想と化しました。

震災、パンデミック、戦争、自然災害、経済危機——あまりにも多くの危機が短期間に連続し、「安心」という言葉自体が、もはや過去のもののように感じられています。

「みんな苦しい」の正体は、構造化された持続的な不安であり、誰にも責任を押しつけることのできない漠然とした“社会そのもの”の在り方にあります。

その苦しさは、もはや個人の努力や心の持ちようではどうにもなりません。だからこそ、今、求められているのは、「あなたの苦しさは、あなただけのものではない」という理解であり、「苦しいのは仕方がない」という受容でもあります。この社会において苦しむことは、決して弱さの証明ではなく、正常な感受性の表出なのだと思います。


疲れている人が「疲れた」と言えること。

不安な人が「不安だ」と言えること。

それこそが、社会の健全性を守るための最低限の条件であるはずだと思います。

「みんな苦しい」。

だからこそ、誰かの苦しみに鈍感であってはなりません。

苦しさを無視する社会は、いつか必ず崩れてしまいます。

そしてその反対に、苦しさを見つめ、共有し、受け止め合う社会には、静かだが確かな希望が生まれます。

私たちは今、希望を語る前に、苦しさを語る勇気を持つ必要があります。それが、この息苦しい時代における出発点なのではないかと思います。











当社ではお客様からお預かりした廃棄繊維をボード化・シート化して、企業活動のお役に立つ新しい材料としてお戻しするサービスを行っています。古着、繊維くず、ユニフォーム、リネンなど、作業着やユニフォームに限らず繊維であれば何でもご相談可能です。詳しい事業内容をご覧になりたい方はGREEN FLAG事業紹介ページをご覧ください。




執筆者


有村芳文

株式会社GREEN FLAG 代表取締役。




株式会社GREEN FLAG トップページ