当社の考え
2025/06/17
ただ“優れた素材”では足りない ── 誰もが「使いたくてたまらない」素材を生み出すということ

新しい素材の開発というと、往々にして「どれだけ高性能か」「どんな機能があるか」というスペックの話に集中しがちです。防水性、断熱性、軽量性、耐久性──確かに、それらは重要です。新素材とは、これまでの限界を超える技術であり、その特性そのものが市場を動かすことも少なくありません。
しかし、現実の素材開発において、それだけでは十分ではないでしょう。いかに特性が優れていようと、“使われなければ”素材は存在しないのと同じです。むしろ、素材を現場に届け、施工され、製品化され、人々の手に届いて初めて「社会に価値を与える素材」として成立するものではないでしょうか。
その意味で、素材開発とは単に「物質を高める」行為ではなく、「その素材をどう使ってもらうか」を同時に設計する行為でもあるべきだと考えています。
「現場目線」が素材を浸透させる
たとえば、ある吸音素材が従来品より2倍の吸音率を持っていたとしましょう。これは確かに性能面では素晴らしい。しかし、それを現場に持ち込んだ施工者が「この素材、切りにくい」「重い」「扱いが複雑」と感じればどうなるでしょうか。どれだけ性能が高くとも、現場で“敬遠”されてしまえば採用されることはありません。
素材が社会に浸透するためには、「現場で扱いやすいこと」「誤施工が起きにくいこと」「既存の道具や工程で対応できること」といった施工性や加工性の要素が、むしろ特性以上に重要になる場面も多いと思います。
また、設計者や施工業者にとっては、「どのように使えば、どのような効果が得られるのか」が明確であることも求められています。つまり、素材そのものだけでなく、「使い方のガイドライン」や「施工マニュアル」「事例集」「性能評価レポート」などの周辺情報も、素材開発の一部であるという視点が必要でしょう。
人を惹きつける「突き抜けた魅力」
とはいえ、ただ扱いやすいだけでも、人は動きません。いま世の中には無数の素材が存在し、日々更新されています。そんな中で、設計者や施工者、メーカーの担当者が「これは使いたい」「この素材を提案したい」と思うためには、“突き抜けた魅力”がなければなりません。
それは、性能だけでなく、価格も含まれます。従来品の2倍の性能を持ち、なおかつ価格が抑えられている素材があったとしたら──その瞬間、素材は単なる部材ではなく、「市場を変える武器」に変わります。
選別・再資源化のハードルが高い
衣類には綿・ポリエステル・レーヨンなど多種の素材が混在しており、機械による自動選別が難しく、手作業による分類が必要なケースもある。選別と再資源化に時間とコストがかかる。
人は、性能が“少し良い”素材には慎重になりますが、性能が“圧倒的に良い”素材には惹かれずにいられません。そしてそこに、「扱いやすさ」「安全性」「デザイン性」などの複合的な要素が加われば、素材は“誰もが使いたくてたまらない”存在になります。
現場と向き合う姿勢が、未来のスタンダードをつくる
そのような素材を生み出すには、惜しみない研究開発が必要です。素材の構造設計、原料選定、試験評価、加工試作、耐久検証、現場フィードバック──これらは繰り返し検証され、改善されていきます。
さらに重要なのは、自ら現場に出て、「使われる立場」からの視点で素材を見ることです。開発者が作業服に着替え、実際に素材を施工し、切って、貼って、固定してみることです。現場の職人の声を直接聞き、設計者の図面の読み方を理解するようにします。そうすることで、素材は「開発者の理想」ではなく、「ユーザーの現実」にフィットするものへと進化していくのです。
素材が使われるということは、技術だけでなく信頼の積み重ねでもあります。素材が社会を変える、というと大げさに聞こえるかもしれません。ですが、実際には、現場で「これはいいね」と言われる一言が、流通を生み、需要を動かし、やがてスタンダードを塗り替えていくものと思います。
だからこそ、素材開発とは単なる技術競争ではなく、「人にどう思われるか」「どう使ってもらうか」を徹底して考え抜く行為なのです。
・優れた素材をつくること
・使いたくなる素材にすること
・そして、惜しまずそれを伝えること
そのすべてが、素材開発の一部です。私たちは、ただ“良い素材”をつくりたいのではありません。誰もが使いたくてたまらない、未来をつくる素材を世に出したいと思っています。そのためなら、手間も時間も惜しみません。なぜなら、その素材が世界のどこかで、暮らしや空間や仕事の質を、確かに変えていくと信じているからです。
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