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コラム

2024/08/22

混紡(こんぼう)繊維とはなにか?素材のメリット・デメリットとリサイクルにおける課題を解説

混紡繊維(こんぼうせんい)とは、わたしたちの身近な衣服やインテリア製品などにもよく用いられている繊維素材ですが、具体的にはどのようなものかご存じでしょうか?またなぜ混紡繊維は多くの製品に使われているのでしょうか?本記事では、基本的な混紡の意味から、混紡繊維のメリット・デメリット、そしてリサイクル課題まで幅広く解説していきます。


目次(読みたいブロックにジャンプします)




混紡繊維の基本情報


生地でよく見る「混紡」とは何か?

「混紡」はひらがなで「こんぼう」と読み、異なる性質を持つ繊維を複数種類組み合わせて糸を作る(紡績する)ことを指します。

私たちは普段、衣類を選ぶ際に、デザイン以外にも着心地や機能性なども購入の判断材料になっているかと思います。そのようなニーズを叶える衣類を作るためには、様々な繊維が持つ特性を上手く組み合わせる必要があります。

混紡繊維とは、いわばわたしたちの暮らしをより快適にするための紡績技術によって生まれた繊維素材なのです。

そのため混紡素材は、衣類ごとに求められる快適さと機能性に合わせて様々な組み合わせのバリエーションを持っています。







混紡素材に使われる繊維の種類


混紡素材で掛け合わせる繊維はさまざまですが、

一般的には天然繊維×化学繊維の混紡素材化学繊維×化学繊維の混紡素材という2種類の掛け合わせが多いとされています。

以下では代表的な混紡素材をいくつか解説します。



綿×ポリエステル

天然繊維である綿(コットン)と、化学繊維の代表格でもあるポリエステルの混紡繊維は、一般的にT/C素材と呼ばれ最も広く流通している混紡素材のひとつです。コットンの吸湿性とポリエステルの耐久性を併せ持つ生地をつくることができ、衣類はもちろんのこと、ベッドリネンやカーテンなど広く利用されています。

綿×ポリエステルの特徴

・着心地がよく、シワができにくい

・耐久性があるので家庭用洗濯機で洗濯がしやすい

・綿100%の衣類よりも乾きやすい



ウール×ポリエステル

羊毛である天然素材のウールは、元々羊の体温を保持するために高い保温性を持っています。ポリエステルの耐久性とシワになりにくさを掛け合わせて、冬物のスーツやアウターに多く使われています、またウールは難燃性にも長けていることからアウトドアシーンにも適しており、多くのアウトドアブランドも活用している混紡素材です。

ウール×ポリエステルの特徴

・引っ張り強度に強くなる

・シワができにくい

・ウール100%よりもコストが下がる



ナイロン×ポリエステル

摩擦に強く、伸縮性が高い化学繊維のナイロンは強度の面で優れていますが熱に弱いという弱点があります。それを補うポリエステル繊維との混紡により、安定した品質で強度のある生地が生まれます。こちらもアウター類や化繊ニット類など幅広く応用されている混紡素材のひとつです。

ナイロン×ポリエステルの特徴

・耐久性が高い

・染色や印刷でキレイな色が出やすい

・表面が滑らかな生地に仕上がる



他にもレーヨンとポリエステル、シルクとレーヨンなどの混紡も多く使用されています。今回紹介しているのは2種類の繊維を掛け合わせる混紡素材ですが、中には3種類以上の繊維を掛け合わせた混紡素材も存在します。これらの組み合わせのバリエーションで、それぞれの繊維の特性を補完し合い、より優れた機能性や着心地を追求しています。




混紡素材のメリット・デメリット


メリット

①繊維の良さのいいとこどりが出来る

繊維にはそれぞれ強み・弱みがあります。混紡によって弱みを補うだけでなくさらにその混ぜ合わせた繊維のメリットも付加できるというかたちで、それぞれの繊維の良いところを最大限に活かすことができるのです。

②安くて良いものづくりができる

天然繊維は化学繊維に比べ、コストが上がりやすい素材ですが、天然繊維と化学繊維を混紡することで、良いものを、なるべく安い価格で生活者へとどけることができます。

③ニーズにあったも製品開発ができる

異なる繊維の特性を組み合わせることで、機能性、耐久性、快適さ、デザイン、などあらゆるニーズを叶える製品を生み出すことができます。



デメリット

①ホームケアが難しい

洗濯をしたら縮んでしまった。シワを伸ばしたいのにアイロンがけが出来ない。色落ちをしてしまう。など、異なる繊維を混ぜ合わせた混紡繊維による生地は熱耐性や湿度などの外的な要因に対する反応性が異なることも多いため、ホームケアが思うようにできないことがあります。購入したら必ず組成表示を確認し、ホームケアが難しい素材の場合は無理をせずクリーニングに出しましょう。

②リサイクルに課題がある

昨今ではリサイクル技術の進歩によって以前よりも多くの衣類がリサイクル出来るようになりましたが、混紡繊維で作られた生地をつかった製品はまだまだ効率的なリサイクルが確立できていません。繊維に戻して新たな繊維をつくる技術は基本的に単一の素材に対して活用できる技術のため、混紡素材の場合は分解(分離)させるために手間とコストがかかります。その結果、現状ではまだ混紡素材の製品は最終的に焼却・埋め立てとなることが多いのが現状です。


混紡素材を使った製品例


わたしたちの身近でよく利用されている混紡素材を使用している製品例


衣類

シャツ、ジーンズ、セーター、スーツ、スポーツウェアなど

機能性・耐久性・着心地のすべてを叶えるために天然繊維×化学繊維の混紡繊維が利用されているものが多くあります。最も一般的なのは綿×ポリエステルの混紡素材です。

ファブリック製品

ベッドリネン、カーテン、カーペットなど

肌触りの良さと耐久性はもちろんですが、カーテンなどはポリエステルとレーヨンの混紡により美しいドレープが生まれるよう、デザイン性の観点から混紡繊維を使用する例もあります。

アウトドア用品

テント、防寒着(マウンテンパーカー)など

テントでは、強度と耐水性を兼ね備えてるナイロンとポリエステルの混紡をよく使用しています。またマウンテンパーカーなどの防寒着も保温性だけでなく耐久・耐水・耐火などの観点で天然繊維の良さと高機能な化学繊維を混紡した生地が使用されている場合が多いです。

これらの例をみると、混紡繊維はその特性を活かして、私たちの生活のさまざまな場面で使用されていることが分かりますね。


混紡繊維とリサイクル


混紡繊維はリサイクルに向いていない?


機能面では多くのメリットを持つ混紡繊維ですが、リサイクルが一筋縄ではいかないという点は混紡繊維における大きな課題といえます。様々な種類の繊維が混ぜ合わさっていることにより、機能面ではとても便利なものである一方で、使用後のリサイクルを考えた時には、その混ぜ合わさった異なる種類の繊維がスムーズなリサイクルの妨げになります。化学的に分離するためにはまだ高いコストがかかるため、現段階ではポリエステル100%などの単一繊維よりもリサイクルが難しいのが現状です。



混紡繊維はどんな方法でリサイクルができるのか?


混紡繊維のリサイクルは、一般的にはマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの2つの方法があります。

(※燃料としてリサイクルするサーマルリサイクルもありますが、サーマルリサイクルはリサイクルとは認めていない国も存在するため、こちらでは割愛します)


 マテリアルリサイクル 

廃棄物を粉砕・分解・溶融などの技術を用いて新たな製品を作るための原料にするリサイクル

分かりやすい例でいうと、自動車の内装材やウエス・軍手などはこのマテリアルリサイクルを用いて作られています。一般の生活者の目に触れるようなアウトプットではないため、実はあまり知られていないのが現状です。繊維素材を分別することなくリサイクルできるため効率がよいリサイクルではありますが、元々あった製品の価値を下げて再利用するという点でカスケードリサイクル(別名:ダウンサイクル)とも呼ばれることがあります。


  ケミカルリサイクル  

繊維を化学的に分解して、新たな原料物質を作り出し、それを用いて新たな製品を生み出すリサイクル

単一素材では当たり前に用いられるこの手法は、昨今のリサイクル技術向上により混紡繊維においても原料となる化学物質に分解する技術が生まれています。この方法ならば元の繊維の価値を維持したままリサイクルが叶いますが、現在ではまだコストが高く、実用するには技術的な課題も多く残っています。


価値を上げるマテリアルリサイクルもある


では現状で、混紡繊維の価値を維持しながら効率よくリサイクルができる方法はないのかというと、実はマテリアルリサイクルには元の繊維の価値を高めてリサイクルが出来る「アップサイクル」という考え方もあるのです。

混紡繊維を原料にして新しい素材生み出し、わたしたちの日常を豊かにする空間づくりの材料にしたり、企業活動にプラスとなる新しい使い道をつくる。

マテリアルリサイクルは、生み出すモノとその先の活用方法の工夫次第で元の価値以上の新しい価値を生み出せる可能性を秘めているのです。

GREEN FLAGで展開している再生繊維フェルト(Rebornfiber®)ボードも、そのようなアップサイクルの考え方のもと、沢山のシーンで使ってもらえる素材を目指しています。






Rebornfiber®は厚みと硬さの自由度が高いため、薄いものなら生地のように使用でき、厚く硬い仕上げの場合は家具や什器などの造作用の材料として活用できる自由度を持っています。

また原料の色がそのまま反映されるため、例えば企業のユニフォームなどを集めて原料にする場合、その企業ならではの色をもった素材が誕生することも特徴です。



まとめ


混紡とは異なる種類の繊維を一緒に紡績することで、それぞれの繊維が持つ特性を活かすことができる素晴らしい技術です。生活者に求められるニーズに合わせて適切な繊維を組み合わせることで、私たちの日常生活のさまざまな場面で活用されています。しかしその反面、リサイクルの際には混紡繊維の特性が課題となることもあります。混紡繊維のメリット・デメリットを理解した上で混紡繊維と活用していきましょう。





当社ではお客様からお預かりした廃棄繊維をボード化・シート化して、企業活動のお役に立つ新しい材料としてお戻しするサービスを行っています。古着、繊維くず、ユニフォーム、リネンなど、繊維であれば何でもご相談可能です。詳しい事業内容をご覧になりたい方はGREEN FLAG事業紹介ページをご覧ください。





執筆者



Noriko Yokokura

廃棄繊維を資源化し、サーキュラーエコノミーを実現したい企業の事業支援を行う素材のメーカー、株式会社GREEN FLAGにて営業企画を担当。廃棄繊維ゼロを目指す様々な事業のサポートを通じて学んだ知識を活かし、環境問題や社会課題についてみなさんにわかりやすいカタチで発信します。




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