コラム
2024/03/06
混紡(こんぼう)繊維とはなにか?素材のメリットやリサイクルにおける課題を解説
混紡繊維(こんぼうせんい)とは、わたしたちの身近な衣服やインテリア製品などにもよく用いられている素材ですが、具体的にはどのようなものかご存じでしょうか?またなぜ混紡繊維は多くの製品に使われているのでしょうか?本記事では、基本的な混紡の意味から、混紡繊維のメリット・デメリット、そしてリサイクル課題まで幅広く解説していきます。
混紡繊維の基本情報
生地でよく見る「混紡」とは何か?
「混紡」はひらがなで「こんぼう」と読み、異なる性質を持つ繊維を複数種類組み合わせて糸を作る(紡績)を指します。
私たちは普段、衣類を選ぶ際に、デザイン以外にも着心地や機能性なども購入の判断材料になっているかと思います。そのようなニーズを叶える衣類を作るためには、様々な繊維が持つ特性を上手く組み合わせる必要があります。
混紡繊維とは、いわばわたしたちの暮らしをより快適にするための紡績技術によって生まれた繊維なのです。
混紡生地に使われる繊維の種類
混紡生地に使われる混紡繊維はさまざまですが、
一般的に多い組み合わせは、天然繊維と化学繊維の混紡です。
コットン×ポリエステル
天然繊維であるコットンと、化学繊維の代表格でもあるポリエステルの混紡繊維は、コットンの吸湿性とポリエステルの耐久性を併せ持つ生地をつくることができ、衣類はもちろんのこと、ベッドリネンやカーテンなど広く利用されています。
ウール×ポリエステル
羊毛である天然素材のウールは、元々羊の体温を保持するために高い保温性を持っています。ポリエステルの耐久性とシワになりにくさを掛け合わせて、冬物のスーツやアウターに多く使われています、またウールは難燃性にも長けていることからアウトドアシーンにも適しており、多くのアウトドアブランドも活用している混紡繊維です。
他にもレーヨンとポリエステル、ナイロンとポリエステルなどの混紡も見られます。これらの組み合わせは、それぞれの繊維の特性を補完し合い、より優れた機能性や着心地を追求するためのものです。
混紡繊維のメリット・デメリット
メリット
①繊維の良さのいいとこどりが出来る
繊維にはそれぞれ強み・弱みがあります。混紡によって弱みを補うだけでなくさらにその混ぜ合わせた繊維のメリットも付加できるというかたちで、それぞれの繊維の良いところを最大限に活かすことができるのです。
②安くて良いものづくりができる
天然繊維は化学繊維に比べ、コストが上がりやすい素材ですが、天然繊維と化学繊維を混紡することで、良いものを、安く生活者へとどけることができます。
③ニーズにあったも製品開発ができる
異なる繊維の特性を組み合わせることで、機能性、耐久性、快適さ、デザイン、などあらゆるニーズを叶える製品を生み出すことができます。
デメリット
①ホームケアが難しい
洗濯をしたら縮んでしまった…シワを伸ばしたいのにアイロンがけが出来ない…など、異なる繊維を混ぜ合わせた混紡繊維による生地は熱耐性や湿度などの外的な要因に対する反応性が異なることも多いため、ホームケアが思うようにできないことがあります。
②リサイクルに課題がある
昨今ではリサイクル技術の進歩によって以前よりも多くの衣類がリサイクル出来るようになりましたが、混紡繊維で作られた製品はまだまだ効率的なリサイクルが確立できていないため、最終的に焼却・埋め立てとなることが多い繊維であると言えます。
混紡生地の製品例
わたしたちの身近でよく利用されている混紡生地の製品例
衣類
シャツ、ジーンズ、セーター、スーツ、スポーツウェアなど
機能性・耐久性・着心地のすべてを叶えるために天然繊維×化学繊維の混紡繊維が利用されているものが多くあります。
ファブリック製品
ベッドリネン、カーテン、カーペットなど
肌触りの良さと耐久性はもちろんですが、カーテンなどはポリエステルとレーヨンの混紡により美しいドレープが生まれるよう、デザイン性の観点から混紡繊維を使用する例もあります。
アウトドア用品
テント、防寒着(マウンテンパーカー)など
テントでは、強度と耐水性を兼ね備えてるナイロンとポリエステルの混紡をよく使用しています。またマウンテンパーカーなどの防寒着も保温性だけでなく耐久・耐水・耐火などの観点で天然繊維の良さと高機能な化学繊維を混紡した生地が使用されている場合が多いです。
これらの例をみると、混紡繊維はその特性を活かして、私たちの生活のさまざまな場面で使用されていることが分かりますね。
混紡繊維とリサイクル
混紡繊維はリサイクルに向いていない?
機能面では多くのメリットを持つ混紡繊維ですが、リサイクルが一筋縄ではいかないという点は混紡繊維における大きな課題といえます。様々な種類の繊維が混ぜ合わさっていることにより、機能面ではとても便利なものである一方で、使用後のリサイクルを考えた時には、その混ぜ合わさった異なる種類の繊維がスムーズなリサイクルの妨げになります。化学的に分離するためにはまだ高いコストがかかるため、現段階ではポリエステル100%などの単一繊維よりもリサイクルが難しいのが現状です。
混紡繊維はどんな方法でリサイクルができる?
混紡繊維のリサイクルは、一般的にはマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの2つの方法があります。
(※燃料としてリサイクルするサーマルリサイクルもありますが、サーマルリサイクルはリサイクルとは認めていない国も存在するため、こちらでは割愛します)
マテリアルリサイクル
廃棄物を粉砕・分解・溶融などの技術を用いて新たな製品を作るための原料にするリサイクル
分かりやすい例でいうと、自動車の内装材やウエス・軍手などはこのマテリアルリサイクルを用いて作られていますが、元々あった製品の価値を下げて再利用するという点でカスケードリサイクル(別名:ダウンサイクル)とも呼ばれることがあります。
ケミカルリサイクル
繊維を化学的に分解して、新たな原料物質を作り出し、それを用いて新たな製品を生み出すリサイクル
単一素材では当たり前に用いられるこの手法は、昨今のリサイクル技術向上により混紡繊維においても原料となる化学物質に分解する技術が生まれています。この方法ならば元の繊維の価値を維持したままリサイクルが叶いますが、現在ではまだコストが高く、実用するには技術的な課題も多く残っています。
価値を上げるマテリアルリサイクルもある
では現状で、混紡繊維の価値を維持しながら効率よくリサイクルができる方法はないのかというと、実はマテリアルリサイクルには元の繊維の価値を高めてリサイクルが出来る「アップサイクル」という考え方もあるのです。
混紡繊維を原料にした新しい素材を、例えばわたしたちの日常を豊かにする空間づくりの材料にしたり、企業活動にプラスとなる新しい使い道をつくる。
マテリアルリサイクルは、生み出すモノとその先の活用方法の工夫次第で元の価値以上の新しい価値を生み出せる可能性を秘めているのです。
GREEN FLAGで展開している再生繊維フェルト(Rebornfiber™)ボード・シートも、そのようなアップサイクルの考え方のもと、沢山のシーンで使ってもらえる素材を目指しています。
まとめ
混紡とは異なる種類の繊維を一緒に紡績することで、それぞれの繊維が持つ特性を活かすことができる素晴らしい技術です。生活者に求められるニーズに合わせて適切な繊維を組み合わせることで、私たちの日常生活のさまざまな場面で活用されています。しかしその反面、リサイクルの際には混紡繊維の特性が課題となることもあります。混紡繊維のメリット・デメリットを理解した上で混紡繊維と活用していきましょう。
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