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コラム

2023/12/27

繊維のリサイクルが進まないのはなぜ?リサイクルの課題と現状、解決するのための考え方をご紹介

こんにちは。繊維のリサイクル素材を通じて、サーキュラーエコノミー事業を展開するGREEN FLAGのyokokuraです。

2023年の12月、サーキュラーエコノミー先進国のEUから「EU理事会が未使用の繊維製品の廃棄を禁止する規則案を採択」というニュースが飛び込んできました。

各国でサーキュラーエコノミーの実現に向けた具体策が加速した2023年、日本の繊維リサイクル推進はどのような状況なのでしょうか。この記事では、繊維リサイクルの現状について解説をしながらリサイクル課題を解説し、課題解決のために必要な考え方をわかりやすく解説します。

繊維産業だけに限らず、モノづくりに携わるすべての人に今後必要な考え方と向き合うきっかけになれば幸いです。

作成:2023年12月27日

最新更新日:2024年2月6日


目次(読みたいブロックにジャンプします)




繊維リサイクル率の状況について


不用衣類の66%は未だにリサイクルできていない

環境省の2022年データによると、国内で焼却・埋め立て処分となる衣類は年間約47万トン、1日あたり大型トラック120台分(1,200トン)の衣類がリサイクルされることなく廃棄されています。

これは国内で排出される不用衣類全体の66%にあたり、古着屋での販売や寄付などによるリユースは約19%・衣類のリサイクル率はわずか15%にとどまっています。

また忘れてはいけないこととして、リユースには海外へ輸出される衣類も含まれているものの、輸出先で不用だと判断された衣類は、結果的に海外で焼却・埋め立てられているため、実際の焼却・埋め立て処分率はもっと高いと考えられます。

出典:環境省_サステナブルファッション

捨てられているのは繊維だけではない

焼却・埋め立てられている47万トンの繊維の製造には、大量の天然資源を消費しています。服1着の製造に必要な水は約2,300L、浴槽に置き換えると11回分に換算されます。またCo2においても製造時には大量のCo2を排出しています。

捨てられているのは繊維製品だけではなく、私たちが生きるために欠かせない水資源も捨てられているということになるのです。



環境対策先進国の動き



EUが繊維・アパレル産業の未使用繊維の廃棄禁止規制の準備を開始


サーキュラーエコノミー先進国とされるEUは、2023年12月にアパレル産業の未使用繊維の廃棄禁止規制を採択しました。石油産業に次ぐ世界第2位の汚染産業となっている繊維・アパレル産業の環境汚染対策として採択されたこの規則はEU諸国に製造拠点を置く外国企業にも適用されます。現段階での廃棄禁止の対象は「未使用品の繊維」とされていますが、将来的には他の製品にも適用される見通しとなっています。

この規制の対象範囲は、小規模企業は除外されますが、中規模以上の企業には1年間の猶予期間が与えらた後に施行されます。今後の動きとしてEU議会の採択を経て最終合意後、EU諸国にて大規模企業から順次施行される見込みです。


エコデザイン規制について


エコデザイン規制とは、
持続可能な製品設計を叶えるためにEUの環境委員会が提案したモノづくりにおける新しいルール

EUの環境委員会が提案したエコデザイン規制は、EUが取り組む循環経済パッケージの一部として、製造する製品を環境に優しく、循環的でエネルギー効率の高いものにするためのルールを規定しています。

具体的には製品の寿命延長、消費者情報の向上、使用後のリサイクル効率向上とトレーサビリティのための製品パスポートの添付、売れ残り商品の廃棄禁止などが規定項目とされており、アパレル製品の廃棄禁止規制もこのエコデザイン規制の中の要件のひとつとなります。

また欧州議会議員では環境負荷が高く喫緊の課題となる製品群を重点製品と位置付けており、アパレル・繊維製品についてはこの重点製品群に含まれています。

参考資料:Ecodesign regulation: Council adopts position
参考資料:Ecodesign: new EU rules to make sustainable products the norm


廃棄繊維のリサイクルに関する問題




なぜ繊維のリサイクル率は上がりにくいのか?

日本でも繊維(主に衣類)のリサイクルに対する意識は年々高まっているといえますが、実際の数字をみると衣類のリサイクル率はリユースを含めても34%程度にとどまり、未だ66%がリサイクルされずに廃棄されているのはなぜなのでしょう?

それには、衣類の機能やデザインの進化による素材構成の複雑化が大きく影響しています。



リサイクル可能な繊維には条件がある

数年前に比べると、再生ポリのエコバックやTシャツ、再生ウールのニットなど、繊維から繊維へとリサイクルされた製品は数多く見かけるようになり、一見すると繊維のリサイクルは進んでいるのでは?と思います。

ケミカルリサイクルにおける化学技術は確かにこの数年で飛躍的に進化しているものの、リサイクルされているほとんどは、ポリエステル・ウール・綿などの繊維素材が単一の場合であることが前提のリサイクル技術となっています。単一の繊維に分別できる条件をクリアできれば、ケミカルリサイクルによって繊維を循環することができるのですが、混紡繊維の場合、効率の良いケミカルリサイクルは実行出来ません。


リサイクルを阻む衣類の素材構成



今シーズンあなたが買った洋服はどんな素材できていますか?


今シーズンあなたが購入したお気に入りの衣服を思い出してみてください。

組成表示は単位素材100%ですか?ボタン・ファスナーはないでしょうか?裏地の素材はどうでしょう?撥水・吸汗加工は施されていないですか?

シンプルなTシャツや下着類を除けば、大抵の衣類はこのようない素材が複合的に組み合わさって構成されています。
リサイクル可能な繊維の要件が単一繊維であるとすると、このような複合的に素材が組み合わさり、また繊維についても単一素材ではない「混紡繊維」と呼ばれる繊維を使用している衣類をそのままリサイクルすることは困難です。

衣類も年々進化しており、その機能性やデザインの追及のおかげがあって、私たちは快適に過ごすことが出来たり、個性を表現したオシャレができるのですが、その一方で使い終えた衣類のリサイクル難易度が上がってしまっているというのが現状です。


どうしたらリサイクル率が上がるのか?

では、今後どのような手段を検討していけば繊維のリサイクルは向上していくのか、いくつかの手段をご紹介します。



①製造の段階からリサイクルを考えて作る

どんな魅力的な衣類であっても、役目を終えるときは必ずやってきます。その際いかにリサイクルしやすい状態にしておけるかは、製造設計の時点から配慮しておく必要があります。

例えば、製品に使用している素材の全量を把握しやすくしたり、リサイクルの前処理で分解しやすい仕様設計をするなどです。

EUのエコデザイン規制では、アパレルに限らず建築資材などにもこの考え方が取り入れられており、組成情報のデータ化する「製品パスポート」の導入を推進しています。


②リサイクルのための前処理技術を上げる

現在衣類のリサイクルを行う際、付属品の分解や色分けなどには人間の目視と手作業による前さばき処理が欠かせません。

この工程を自動化して効率アップを図ることや、化学による分離技術の開発で前さばきを必要としない工程づくりも考える必要があります。


③回収の仕組みを整える

製造・リサイクル工程の効率化を図っても、回収率が上がらなければ意味はありません。

企業や自治体が協力し、消費者が使用済みの衣類をリサイクルに回しやすい環境の拡充と、消費者自身にその意識を深めてもらうための啓蒙活動も欠かさずに検討が必要です。

もちろんそのための法整備も議論が必要なポイントとなります。


まとめ


繊維のリサイクル率を上げるための考え方は、衣類だけに限らず世の中のモノづくりすべてに共通しています。大量生産・大量消費の経済モデルが終了したいま、あらゆる資源が循環することを前提としたモノづくりによって、より良いものを追求していく必要があるのです。大量に作ることの何倍もの労力が必要なことや膨大なコストが掛かることもあり、一朝一夕で切り替えられるものはありません。しかしながらモノづくりに携わるひとりひとりがこの時代の変化に対して意識を高めて、できることから行動を起こすことが、産業全体のポジティブな変化につながるでしょう。


当社の事業もサーキュラーエコノミーの実現を目指し、廃棄繊維を資源に変える「再生繊維フェルトシート・フェルトボード」を通じで繊維リサイクルの課題解決に向き合っています。

資材販売だけでなく、お客様からお預かりした廃棄繊維をボード化・シート化して資材としてお戻しするサービスも行っています。古美、繊維くず、ユニフォーム、リネンなど、繊維であれば何でもご相談可能です。詳しい事業内容をご覧になりたい方はGREEN FLAG事業紹介ページをご覧ください。





執筆者



Noriko Yokokura

廃棄繊維を資源化し、サーキュラーエコノミーを実現したい企業の事業支援を行う素材のメーカー、株式会社GREEN FLAGにて営業企画を担当。廃棄繊維ゼロを目指す様々な事業のサポートを通じて学んだ知識を活かし、環境問題や社会課題についてみなさんにわかりやすいカタチで発信します。




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